518日 不眠症一考

 これこそ医道の言である。近衛文麿公は平生不眠症に苦しんで、幾種もの睡眠剤を用い、なお常に良薬を求めていた。或人がこの通りの話をして聞かせたが、公は苦笑していたことを思い出す。終戦の際、病死した南京の周仏海も強心剤の愛用者であったが、いずれも間違っている。我々の深省すべきことである。

谷泰山は土佐の名相野中兼山の遺風を慕い、山崎闇斎に学び、闇斎が最も敬愛嘱望した賢人である。土佐長岡郡八幡の生。漢学・国史らに通じ、最も神道に深詣して遺著も多い。      百朝集