鳥取木鶏研究会 ５月例会 平成１９年５月７日 月曜
テーマ 「人づくり入門②」
(懸命に辞書を探索してルビをつけておきました。)
前輩嘗って説く、後生才性人に過ぐる者は畏るるに足らず。惟だ読書尋思推究する者畏るべしと為すのみ。又言う、読書は只だ尋思を怕る。蓋し義理の精深は惟だ尋思し、意を用ひて以て之を得べしと為す。鹵莽にして煩を厭ふ者は決して成ること有るの理無し。
程伊川の文集より
―程頤（てい・い、1033年－1107年）中国北宋時代の儒学者。字は正叔、伊川先生と称された。兄の程顥とともに朱子学・陽明学の源流の一人。――
子夏曰く、賢を賢びて色を易んじ、父母に事へて能く其の力を竭し、君に事へて能く其の身を致し、朋友と交り、言ひて信あらば、未だ学ばずと曰うと雖も、吾は必ず之を学びたりと謂はん。
学を志すものは衣食等の不足は言わない(論語、学而編より)
① 孔子曰く、君子は食・飽くを求むる無く、居・安きを求むる無く、事に敏にして而して言を慎み、有道に就いて而て正す。学を好むと謂うふべきのみ。
②孔子曰く、敝れたる?袍を衣て、狐狢を衣る者と立ちて恥ぢざる者は、それ由か。
③孔子曰く、士・道に志して而して悪衣・悪食を恥づる者は、未だ与に議るに足らざるなり。
④曲禮に曰く、食を共にしてし飽かず。飯を共にしては手を沢さず。飯を搏することなかれ。放飯することなかれ。流?することなかれ。咤食することなかれ。骨を齧むことなかれ。魚肉を反することなかれ。狗に骨を投げ与ふることなかれ。固く獲んとすることなかれ。
⑤論語に曰く、食は精を厭めず、膾は細きを厭めず。食の饐れて?え、魚の餒れて肉の敗きは食はず。色の悪しきは食はず。臭の悪しきは食はず。?るを失へるは食はず。時ならざるは食はず。割正しからざれば食はず。その醤を得ざるときは食はず。肉は多しと雖も食気に勝たしめず。唯酒は量無けれども乱に及ばず。食ひし酒、市ひし脯は食はず。薑を撤てずして食う。多沽せずと。
⑥汪信民嘗に言う。人常に菜根を咬み得ば則ち百事做すべしと。胡康侯之を聞き、節を撃ちて嘆賞せり。
修養すれば直ぐ態度に現れる
①劉公賓客を見て譚論時を踰ゆるも、体欹側する無く、肩背竦直にして身少しも動かず。手足に至るも亦移らず。
②菅寧嘗に一木榻上に坐す。積って五十余年、未だ嘗って箕股せず。其の榻上膝に当る処皆穿てり。
③程明道先生終日端坐して泥塑の如し。人に接するに及んでは即ち渾て是れ一団の和気。
注釈 程（てい・こう、1032年‐1085年）は、中国北宋時代の儒学者。字は伯淳、明道先生と称された。朱子学・陽明学の源流の一人。
④曾子曰く、君子、道に貴ぶ所の者三あり。容貌を動かしては斯ち暴慢を遠ざかり、顔色を正しては斯ち信に近づく。辞気を出しては斯ち鄙倍を遠ざかる。
聖賢の教えは自己の本心を掴むにあり
①仲由、過を聞くことを喜びも令名窮まり無し。今人過ち有るも人の規すを喜ばず。疾を護って医を忌むが如し。寧ろ其の身を滅すも而も悟ること無きなり。噫。
注釈 子路（しろ、紀元前543年 - 紀元前481年）は、姓は仲。名は由。孔門十哲の一人であり、字の子路をもって『論語』にしばしば言及される。季路とも呼ばれる。武勇を好み、そのためか性格はいささか軽率なところがある反面、質実剛健たる人物。『論語』には、性格の軽率さを孔子にとがめられるも、その人物の率直なるを持って愛された姿が記される。弟子の中で『論語』に出てくる回数が最も多い。
②孫思?曰く、胆は大ならんことを欲し、而て心は小ならんことを欲す。智は円ならんことを欲し、而て行は方ならんことを欲す。
③茫文正公、少うして大節有り。其の富貴・貧賤・毀誉・歓戚に於て一も其の心を動かさず。而て慨然天下に志有り。嘗て自ら誦して曰く「士は当に天下の憂に先んじて憂へ、天下の楽に後れて楽しむべきなり」と。其の上に事へ、人を遇するに、一以て自ら信にし、利害を選んで趨捨を為さず。其の為す所有れば、必ず其の方を尽して曰く、之を為す我による者は当に是の如くすべし。其の成ると否と我に在らざるある者は、聖賢と雖も必する能はず。吾豈苟にせんやと。
④明道先生曰く、聖賢の千言万語、只是れ人己に放てる心を将って、之を約めて反復身に入れ来たらしめ、自ら能く尋ねて向上し去り、下学して上達せんことを欲するなり。
⑤顔氏家訓に曰く、人の典籍を借りては皆須く愛護すべし。先に缺壊有らば、就ち為に補治せよ。此れ亦士太夫百行の一なり。済陽の江禄・書を読んで未だ竟へざれば、急速有りと雖も、必ず巻束整斉を待って然る後起つことを得たり。故に損敗無し。人其の仮るを求むるを厭はず。或は几案に狼藉し、部秩を分散することあらば、多く童幼婢妾の為に点汚せられ、風雨蟲鼠に毀傷せらる。実に徳を累すとなす。吾れ聖人の書を読む毎に未だ嘗て粛敬して之に対せずんばあらず。其の故紙にても五経の詞義及び聖賢の姓名有れば敢て他に用ひざるなり。
⑥顔氏家訓に曰く、夫れ読書学問する所以は、本と心を開き、目を明らかにし、行に利からんことを欲するのみ。未だ親を養ふことを知らざるものには、其の古人の、意に先んじ、顔を承け、声を怡らげ、気を下し、劬労を憚らず、以て甘?を致すを観て、惕然として慙懼し、起って而て之を行はんことを欲するなり。未だ君に事ふることを知らざるものには、其の古人の、職を守りて侵す無く、危きを見て命を授け、試諫を忘れずして以て社稷を利するを見て、惻然として自ら念ひ、之に効はんと思欲せんことを欲するなり。素と驕奢なる者には、其の古人の恭倹にして用を節し、卑以て自ら牧ひ、礼は教への本たり、敬なるものは身の基なることを観て、瞿然として自失し、容を斂め、志を抑へんことを欲するなり。素と鄙悋なる者には、其の古人の、義を貴び財を軽んじ、私を少くし、慾を寡くし、盈つるを忌み、満を悪み、窮を?し、匱しきを恤むを観て、赧然として悔い恥じ、積みて能く散ぜんことを欲するなり。素と暴悍なる者には、其の古人の、心を小にし、己を黜け、歯は敝るるも舌存し、垢を含み疾を蔵し、賢を尊び衆を容るるを観て、?然として
鳥取木鶏研究会 徳永圀典 記