孔子の九思 論語季氏篇

@には、視ることは明かなることを思う。凡そ、眼の見る所、外物に覆われることなくして明らかに、分らぬことのないようにしたいと思う。

Aには、聴くことは聡ならんことを思う。凡そ、耳の聴くところ、うちに(ふさ)がることなくして、外に聴きのがすことのないようにしたいと思う。

Bには、色の穏かならんことを思う。平生の顔色は穏かで激しからぬようにせんことを思う。

Cには、身の(かたち)は常に(うやうや)しくして、怒り(いきどお)ることのないようにしたいと思う。

Dには、口にする言葉は、その心を尽して、真実で、行き届いて残ることのないようにしたいと思う。

Eには、事は敬ならんことを思う。(よろず)のことを慎み深くして、過ちのないようにしようと思う。

Fには、疑いは問わんことを思う。心に疑いが起ったら、先ず師友に問うて心に解決を得んことを思う。

Gには、忿(いか)りは難を思い、一端の忿(いか)りに、その身を忘れて、遂に困難が来たるものであり、心に怒りを生じた折は、その困難あらんことを思うて、これを止める。

Hには、得ることを見て義を思う。凡そ、心に得たことがあったならば、必ずそれは義か、不    義を(つまびら)かにして、その不義を思わずして、義をとらんことを思う。