自立自尊の精神を養え 外山滋比古 お茶の水大学名誉教授
年はとっても、ものを思い、世を憂うことはできる。
言い出したら切りがない。ここでは三つにしぼる。
まず、数と量にふりまわされない根性が欲しい。多数が力をもつのは是非もないけれども、それを正義のように考えるのは判断力の欠如である。
みんなと一緒なら怖くない、というのは弱虫である。
流れに流されない個性を堅持するのは容易ではないが、敢えて志を貫く精神力を持つ人間が少なくては、デモクラシーは劣化する。
その二。自分のことは自分でする。自分のしたことには責任を持つ自立自尊の精神を尊重する。
エスカレーターに乗っていて階段をのぼる人を小バカにするのは不遜である。階段をのぼる人が道行く人を見下ろすのは思い上がり。道行く人が我こそ天下の大道を行くものと威張るのは滑稽である。
道無きところを踏み分けて進み、歩いたあとが道になる人によって世の中は進歩する。
エスカレーター人間になって得意になるのは幼い。二世であることをやめることはできない。二世的であることを恥じる気概が貴重である。
最後は、教育の問題。今の教育は古い教育思想をひきずり、年齢が上るほど重要なことを教える逆ピラミッド型である。
これを逆転、早いほど大切なことが教えられるピラミッド型にし、0歳から5歳までに新しい才能教育を行うようにする。
子供は、みな天才的資質を持って生まれてくるのに、生後の育成が宜しきを得ないため、タダの人になっている。これを改めれば優れた人材が輩出する。