56日 先考と先妣(せんぴ) その二


なるほど、考という字は考えるという意味であります。また成すという意味であります。孝成という言葉がある。これは考という一字でもよいのであります。それから老いるという意味もあります。しからば、亡き父をなぜ先だった考、先考というかと申しますと、我々子供の時は親のいう事、考えることがよくわからない、年とって、つり人生を久しゅうするに及んで自分が亡くなった父の年ごろになって初めて流石に父はよく考えておった、まだまだ至らんものだった、父はよく考えた人であったということがよくわかる。年をとつてはじめて父はよく考え、よく成した人であったことを解するに至る。