56日 習慣の織物

 民主主義だの、共産主義だのと理屈を言っているよりも、身嗜みでも善くして、怒鳴ったり、わめいたり、立小便したり、痰唾(たんつば)吐きちらすような習慣を止めるように努力しあうがよい。名を公共や大衆に借って私忿(しふん)を晴らしたり、私欲を遂げる癖を直そうではないか。成功するにつれてがらりと悪変りする風習などをこそ改めたいものである。

人間には四つの要素がある。徳性と知能、技能、及び習慣である。徳性が本質で、知能や技能はいくら有用・有意義でも属性的なものである。習慣は徳性と離すことのできないもので、第二の天性ともいわれる。習慣を軽んずるのは人間の破滅である。 百朝集