無責任な批判』『レッテル貼り』には断固反論する 

安倍首相独占インタビュー 

2015.05.07 ZAKZAK

 

 安倍晋三首相が、夕刊フジの独占インタビューに応じた。日米同盟の強化が確認されたオバマ大統領との日米首脳会談や、リンカーン記念館見学の秘話、日本の首相として初めてとなる米議会上下両院合同会議での演説などを、米国からの緊急メールも交えて答えた。さらに、ゴールデンウイーク(GW)後に本格化する安全保障法制整備の真意や、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への対応、超能力者のユリ・ゲラー氏との意外な関係などについて、一気に語った。

 ──訪米の手応えは

 「日米の新たな時代の幕開けを象徴した訪問だといえる。日本の首相として9年ぶりの公式訪問であり、オバマ大統領との首脳会談だけでなく、大統領主催の公式晩餐会、バイデン副大統領やケリー国務長官ら、連邦議会からも、心のこもった歓迎を受けた。感謝したい。日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を18年ぶりに改定し、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)も最終局面に向けて大きく前進した。オバマ大統領とは、日米で平和と繁栄に満ちあふれた世界をつくろうという夢を確認し合った。胸襟を開き、あらゆる課題について、じっくり話し合えた。後世の人々が『あのホワイトハウス中庭での記者会見から、日米関係は変わった』と語るような歴史的会談だった

 ──米議会上下両院合同会議での演説は世界でも注目された

 「日米両国は『自由』『民主主義』『人権』『法の支配』といった基本的、普遍的価値観を共有している。演説では、戦後の日本が、先の大戦に対する痛切な反省を胸に、歩みを刻んできたことを示したうえで、今後も『アジア太平洋をはじめ、世界の平和と繁栄に指導的役割を果たしていく』という、強いメッセージを発信することができた。日米同盟を『希望の同盟にしていこう』と訴えた。議員の方々は何度も立ち上がり、大きな拍手で支持を表明してくれた。演説終了後も、しばらく拍手が鳴り止まなかった。日米の絆は強化された」

 ──祖父の岸信介元首相も米議会で演説した

 「祖父は1957年6月、同じ議場に立った。私は当時3歳で覚えていないが、とても感慨深い。今回の演説冒頭、祖父の『日本が世界の自由主義国と提携しているのも、民主主義の原則と理想を確信しているからだ』という演説の一部を引用した。民主主義国家としての歩みが成長と繁栄につながったことを伝えるとともに、日米両国が共有する価値観をもう一度かみしめ、世界に根付かせるべきだと思ったからだ」

世界で「共有すべき価値観が揺らいでいる」という危機感があるのか

 「『自由』『民主主義』といった基本的、普遍的価値観は、世界の平和と繁栄の礎であり、各国が共有すべきものだ。ところが、『法の支配』を軽視したり、武力や威嚇によって現状を変更しようという動きがある。国家が何か主張をするときは、国際法に基づいてなすべきで、紛争の解決は、あくまで平和的手段によらなければならない。これには共通の認識として対処すべきだろう」

 ──オバマ大統領との特別なエピソードは

 「米国に到着直後、オバマ大統領から『(ワシントンDCの)リンカーン記念館を案内したい』と連絡があった。一緒に大統領専用車に乗って記念館まで行き、大統領のエスコートで見学して回った。オバマ大統領は、第16代エイブラハム・リンカーン大統領をとても尊敬していた。リンカーン大統領のニックネームは「Honest Abe」(誠実なエイブ)だ。「Abe=安倍」という不思議な縁も感じた。リンカーン大統領が南北戦争中に行った、あの有名な『人民の、人民による、人民のための政治』という訴えで知られるゲティズバーグ演説が刻まれている壁面の前で、米国が最も大切にする『自由』と『平等』、それを守るために尊い命を捧げた先人らに思いをめぐらせた。2人だけで歩いた、あの素晴らしい時間を忘れない」

 ──GW後は、安全保障法制の整備が焦点だ。改めて必要性を

 「戦後70年、日本が平和と繁栄を享受できたのは、自衛隊が24時間、365日、領土領空領海を守ってきたうえ、日米同盟による抑止力があったからだ。現在、テロや大量破壊兵器の拡散など、安全保障環境は激変している。もはや、どの国も、一国で平和と安全を維持することはできない。わが国としては、日米間の安全保障・防衛協力を強化するとともに、域内外のパートナーとの信頼・協力関係を深め、切れ目のない対応を可能とする法整備を行うことが必要だ。加えて、国力にふさわしい国際貢献も展開していく」

 ──一部の野党やメディアは批判している

 「『戦争に巻き込まれる』『子供が戦場に』『戦争法案』などだが、60年安保改定でも同じような批判があった。そうした批判が間違っていたことは歴史が証明している。『無責任な批判』『レッテル貼り』には、断固反論していく。戦争に巻き込まれないために、日本の平和と安全を維持するために、責任ある法整備を進めていく」

 

安全保障環境の激変が目に見えている沖縄県で危機感が薄い

 「尖閣諸島を所管する石垣市の人々は『わが島を、わが海を守ってほしい』と訴えるなど、強い危機感を持っている。こうした声に応えるとともに、米軍基地が集まる沖縄県での基地負担の軽減を進めていく。普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に伴い、米軍の空中給油機15機は全機、岩国基地(山口県岩国市)に移転した。岩国の方々には『沖縄だけに負担を押し付けない』という思いがあった。嘉手納基地以南の土地返還も進み始めており、3月には、東京ドーム11個分という『西普天間住宅地区』が返還された」

 ──8月に発表する「戦後70年談話」も注目されている

 「私は先日、インドネシアの首都ジャカルタで開かれたアジア・アフリカ会議(バンドン会議)で演説した。わが国は60年前、あの会議に招待されて国際社会に復帰した。国連加盟は翌1956年だ。日本は先の大戦を深く反省し、平和国家としての歩みを続けてきた。同時に地域や世界の平和や繁栄のために貢献してきた。70年談話でも、その思いを発信したい」

 ──中国が主導するAIIBへの対応は

 「アジアに膨大なインフラ需要があり、それに応えるのは重要な課題だ。AIIBもそうしたニーズに応えようと出てきた構想だろう。一方で、日本は責任あるアジアの一員として、返済能力以上の資金供給や、不適切な事業は避けなければならない。そのためには『公正なガバナンス』債務の持続可能性』『環境・社会への影響への配慮』などが不可欠だが、まだAIIBには不明な点が多い。ドル建て決済、また、外貨準備は使わないため、金利はコマーシャルベースとなるようだが。いずれにせよ、アジアの人々への責任や、多額の出資に伴う国民への責任もあるので、加盟には慎重でなければならないと思う」

 ──6月に、なでしこジャパン(サッカー女子日本代表)の連覇がかかるワールドカップがある

 「なでしこジャパンは4年前、東日本大震災で暗い気持ちになっていた日本人に勇気と希望を与えてくれた。米国代表を相手に、延長戦まで諦めず戦い抜き、PK戦で初優勝を成し遂げた。私も心から感動した。『自分たちも頑張ろう』と奮い立たせてくれた。また、ドラマを見せてほしい」

 

 ──外遊が続いているが、政府専用機ではどう過ごしているのか

 「行きは会議や会談の事前勉強や打ち合わせで、かなり時間を取られる。帰りは休む場合が多い。移動が長いと体が硬くなるので体操はよくする。竹下登元首相が、父(安倍晋太郎元外相)に教えてくれた『真向法(まっこうほう)体操』をやっている。あと、ユリ・ゲラー氏に教えてもらった体操もいい」

 ──超能力者の?

 「以前、ゲラー氏と会ったときに、『腰が痛い』と相談した。ゲラー氏が『私に任せろ』というので、超能力で治してくれるのかと思ったら、別室に連れて行かれて、猫が背伸びをするような体操を教えられた。『えっ、超能力じゃないの?』と意外だったが(笑)、効果は抜群だ」

 ──新春特別号のインタビューでは、愛犬ロイ君が、麻生太郎副総理兼財務相の自宅前でオシッコをした話が注目された

 「あの後、麻生さんに『知らなかったぞ。そういえば少し臭ったかな』と言われた(笑)。ロイは最近、年をとって反応が鈍くなってきた。ただ、外遊から戻ると、玄関まで飛んでくる」

 ──後半国会の意気込みを

 「日本では、戦後つくられた多くの制度が限界を迎えている。今国会は『改革断行国会』であり、安全保障法制の整備とともに、農業や医療、教育などの岩盤規制を改革していく。経済も日経平均株価が2万円までくるなど、15年続いたデフレ・マインドは変わりつつある。株高は、家計の金融資産を50兆円増やし、公的年金の累積運用益を35兆円にするなど、国民の方々の生活にも確実にプラスになっている。内閣一丸となって改革を進めていく」

 ◇おことわり 今回の特別インタビューは、訪米時の部分はメールで、それ以外は、訪米前に首相官邸で行った。