傲慢中国黙らせた「強い日米同盟」、東南アジア諸国が歓迎 「歴史和解モデル」突きつけられた韓国

 

 昨秋、チェイニー副大統領の首席補佐官だったスクーター・リビー氏に会って、「米国の次期大統領は誰がふさわしいか」と聞いてみた。即答で戻ってきた答えには仰天した。彼は平然と「シンゾウ・アベ」と言ってのけたのだ。(SANKEI EXPRESS)

 もちろん、冗談には違いないが、オバマ大統領に対する不満と合わせ、頭の片隅にある思いの一端をのぞかせたのだろう。その理由をリビー氏は安倍晋三首相のもつ指導力、対外的な戦略観、組織の掌握力などを次々に挙げた。

 首相による米議会演説後のウォールストリート・ジャーナル紙には、共和党大統領候補のルビオ上院議員が「強い日米同盟を必要とするアジア」とのテーマで寄稿し、安倍訪米の意義を描いた。首相の領有権に対する「法の支配」重視、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への取り組みを含め、「米国と目標を共有しており、全面的に支援すべきだ」と後押しする。韓国系の代理人である下院議員らが、慰安婦に言及しないことを「恥ずべきもの」と述べたが、限られた少数派にすぎない。

 日米関係が「不動の同盟」である限り、中国は対日姿勢を抑制せざるを得ず、韓国は孤立感から軌道修正を迫られる。そして東南アジアの国々は、傲慢な中国との均衡のために、強い日米同盟を歓迎した。

今回の日米首脳会談が明示したのは、同盟が不断の変化を遂げており、日米分断を策しても無駄であるとの強力なメッセージであった。中国が日米同盟を「冷戦期の遺物」(洪磊外務省報道官)といったところで、部外者の希望的観測にすぎない。

 当のオバマ大統領は、歓迎式典で「同盟は時代に合った形で広げ、未来に照準を合わせる」と変化を強調し、安倍首相が「日米関係は不断に発展」と応じているからだ。その具体化が、合意した「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の再改定であり、日米安保条約の改定に匹敵するものなのだ。

 中国は習近平国家主席が米国に持ち掛けた「新型の大国関係」が、排除されたと感じているだろう。米国ではすでに、マケイン上院軍事委員長ら超党派有力議員が国務、国防長官あてに共同書簡を送り、中国の行動を阻止する戦略をとるよう持ち掛けた。権威ある外交問題評議会も最近、米軍の増強と同盟国との軍事協力を含む「対中大戦略」を構築するよう要請している。

 最近のオバマ政権は、中国との競争を隠さなくなってきた。中国主導のアジアインフラ投資銀行への不参加を同盟国によびかけ、TPPに関連して「国際経済のルールは中国に作らせてはならない」との意思を明確に表明している。

では、韓国にあっては、日米共同声明が敵対国から不動の同盟へ転換表明したことをどう感じたか。感情的な対日批判を繰り返す韓国に、日米は「和解モデル」を突きつけたといえる。朴槿恵大統領は4日の会議で「歴史問題に埋没せず」に、安全保障を切り離す現実路線で対応するとの立場を表明せざるを得なかった。

 日米同盟の分断が困難である以上、中国は今後、日米韓から韓国の切り離しをもくろむだろう。日米は逆に、韓国に対し米中双方によい顔をするバランス外交の放棄を迫る。力不足のバランス外交は、同盟を阻害するだけだからである。(産経東京特派員・湯浅博)