指導者の条件 八か条 
国家を守るべき国会議員の劣化が著しい。大企業経営者とて同様なのも見られる。
それは彼らの面相に如実に表れている。要するに、彼らには「命懸けの緊張が欠落」しているのである。
ここに田母神氏の対談があり、ご披露する。
徳永圀典
平成23年6月

 1日 指導者の条件
八か条

@国を守る気概。 A言葉を磨け。

B信念を持て。  C対決を恐れるな。
Dしっかりした国家観・歴史観。
Eほとばしる愛国、
F(ころも)(した)(よろい)
G   靖国参拝。

 2日 自分の国は自分で守る

浜口 
3
11日に発生した大震災に話題が集中していますが、わが国の内政・外交に対してどのような認識をお持ちでしょうか。

 3日 田母神



覚悟はゼロの国会議員

残念ながら、地球には、全世界の人が豊かさを享受できる富や資源はありません。國際政治は、富と資源の分捕り滑合戦で、各国の指導者はその為に奔走しています。建前はともかく、本音は自国の利益追求だけです。このままでは、日本は一方的に権益を侵されてしまいます。一方で、日本の指導者は、国や国民を守るという覚悟はゼロ。今回の震災・津波・原発への対応振りを見ればわかります。 

 4日 山田


政治家には危機感が欠落
先般、米国防総省でゲーツ国防長官の参謀役の人物に会うことができました。彼は「いま米中の軍事バランスが崩れた。19963月の台湾海峡危機の時は、空母2隻を急派したが、今後、同様のことがあれば、台湾は放棄せざるを得ない。日本には潜水艦を増やして欲しいが、それは日本が判断すべきことだ。ただ、中国が台湾を押さえれば、中東から原油を運ぶ日本のシーレーン(海上交通路)は変更を余儀なくされるだろう」と。きわめて深刻な状況ですが、首相以下、政治家には危機感が欠落しています。
 5日 浜口

民主党政権は、外交・安全保障が極めて拙劣

民主党政権は、外交・安全保障が極めて拙劣です。昨年9月、中ロは「対日戦勝65周年共同声明」を発表して「歴史の歪曲や大戦結果り見直しは許さない」と、彼らの歴史観を主張し、北方領土の不法占拠を正当化しました。その一方で、中国漁船が尖閣諸島付近で違法操業し、わが国の海上保安庁巡視船に衝突する事件が起こりました。さらに、昨年11月にはロシア・メドベージェフ大統領が、国後島に降り立ちました。日本は、これらを跳ね返すことができない。

 6日 田母神

中国は軍拡一辺倒ですが、日本はこれに見合う防衛力を強化できていません。これでは、日本は自国を守る意思がないと思われます。実際、ここ9年間、わが国の防衛予算は削減の一途です。国家の防衛は、対象国とのバランスが大切です。処が、日本人は(日米安保があるから大丈夫)。これが落とし穴です。日本が第三国から攻撃された時にアメリカ軍は自動的に日本を守るために参戦するわけではありません。

 7日

日本を守るか、守らないかは、アメリカ次第です。アメリカ大統領が決断して軍に命令しなければ軍は行動できないし、大統領決断も有効期間は2ヶ月です。それ以降は、議会の同意が必要です。それでは議会が日本を守る決議をしてくれるか。

 8日 米軍は世界から撤退

冷戦崩壊以前は、アメリカの軍事力は圧倒的でしたが、それはもはや過去のことです。アメリカの財政状況は大変厳しく、年間50兆円のアメリカの軍事費も今後聖域ではなくなります。予算削減が始まれば、米軍は世界から撤退し始め抑止力はさらに低下します。日本が自分で自国を守る体制に移行すべきです。

 9日

「自国を自力で守れ」というと、軍国主義と非難されますが、軍事力は戦うためではなく、相手を外交交渉のテーブルにつけさせるための道具です。

10日 国を守る第一条件は軍事バランス

本来「許し難い暴挙」という言葉は軍事力の行使を意味します。しかし、日本にその覚悟はないのでロシアから無視されるだけです。日本が軍事力を行使してでも自国を守る決意が見えれば、相手も話し合いに応じます。

11日 第二条件

国を守る第二条件は、情報戦への対処です。相手国の情報収集のためわが国の情報は保全する体制を整える。自国を自分で守れない国は子供の国です。

12日 浜口 日本政府も国民も「日米同盟は永遠だ」と幻想を抱いています。しかし、歴史を見れば、同盟は例外なく期限付きです。日本も、かって日英同盟や、日独伊三国同盟を結んでいましたが、一時でした。独立国なら当たり前の「自国は自分で守る」意識をどう育むか、ですね。
13日 山田

民は置き去り
アメリカでは、民主・共和ともに「中国を囲い込む一方で、彼らをステークホールダー(利害関係者)として巻き込むべきだ」で一致しています。アメリカでは、最終的には日本と中国を天秤にかけるでしょう。日米安保も、日本の覚悟次第です。日本が本気ではないのに、なぜアメリカが手を差し伸べるでしょうか。
14日 民主党政府は国家主権という問題に余りにも鈍感

先日、私は現在進行形のリビア内戦に関連して、こんな話を聞きました。225日に帰国した17人の邦人はスペイン空軍によってリビアからスペインに救出されました。日本政府は同月21日に退去命令を出したものの、海外の軍用機は自国民優先、アメリカ軍も自国民優先ですから、日本人はずっと空港で足止めでした。なぜ、日本の自衛隊機が飛べないのか。なぜスペイン空軍機だったのでしょうか。

15日 民主党政権の大問題

一方、日本の大使館員は大使を含めて3人が残りましたが大使館員の家族は大使夫人を含めて日本の民間人よりずっと前に国外に脱出しました。私は前原外相に「大使館関係者は家族であっても在留邦人と同時かそれ以降が道理だ。外交官の家族を先にという形になったことには納得がいかない」と話しました。今の日本国政府は国家主権という問題に余りにも鈍感だと思います。

16日 浜口

民主党で、
日本の混迷を深化
国家の役割は国民の生命財産を守ることでしょう。そのイロハも分っていない。民主党政権になって以降、首相の言葉や態度に、日々神経を逆なでされています(笑い)鳩山由紀夫首相は「日本列島は日本人だけのものではない」とか、普天間飛行場県外移設断念の理由だった在沖縄米海兵隊の抑止力を「方便だった」と。菅首相は東京電力相手に怒鳴り散らしてみたりと、耳を疑うようなこれらの発言が日本の混迷をさらに深めています。
17日 田母神

リーダーの発言のブレが国益を損じている
官公庁はリーダーの言葉で動くのです。例えば、「今の防衛力整備で中国の軍拡に対応できるのか」と総理が質問すれば、防衛省も外務省も大きく動きます。しかし、そんな発言はゼロ。逆に「防衛費も聖域ではない」と発言すれば、各官庁は「防衛費が削減される」と判断します。

浜口リーダーの発言のブレが国益を損ねていますね。

18日

田母神

信念が無いからブレる

田母神
ブレの根底は保身です。信念が無いからブレる。決断も出来ない。情報収集で八割を掌握したら、あとの二割はリーダーの判断で決断し、その結果に責任を負う。リーダーに覚悟がないことがわが国の不幸です。浜口
山田さんは、杉並区長として議会対策もしながら、諸改革を断行されました。その経験を踏まえて今の国政を預かるリーダーをどう思われますか。

19日 山田

政治家の最も大事な資質

政治家の最も大事な資質は、真に国家と国民を愛することだと思います。ほとばしる愛国心があるかどうか。日本以外のリーダーは、皆、愛国心の塊です。この愛国心の源は、自国の文化や歴史への誇りです。これがない人は政治家になってはいけません。私が30代前半の頃、イギリスで選挙活動の手伝いをしながらサッチャーさんの演説を聞いて驚嘆しました。

20日 国家の大事に命をかける姿勢を

「イギリスは、立派な国だ。あれもこれも、全てイギリスで発明したものだ。世界を豊かにしたのは、イギリスの力である。皆さん、誇りを持ちましょう」と。これこそ、リーダーの気概ですね。
「歴史も技術も製品も、日本は最高だ。この国を誇ろう」という演説が聞ける日本にしたいのです。わが国でも、先人たちの優れた歩みを学ぶことで、国家の大事に命をかける姿勢を育てることができると思います。

21日 日本を憎悪し否定する歴史教科書

戦後、占領軍による「war guilt information program」(戦争についての罪悪感を日本人の心に植えつけるための宣伝計画)以降、先人の歩みを貶め、自国の歴史や文化を全否定する風潮が続いてきました。こうした教育では、まともな次世代は育ちません。そこで、杉並区では、日本を憎悪し否定する歴史教科書の使用は止めました。

22日 成人式の会場は水を打ったように静まり

また成人式では、「まず親に感謝する、そして先人に感謝する」大切さを話し、20才で散華(さんげ)した英霊の遺書を紹介してきました。成人式の会場は水を打ったように静まり、若者の背筋が伸びました。過去とつながらないでやれば、根なし草にはなりません。

23日 政治家は確固とした歴史観を

今の時代に必要なのは、吉田松陰や高杉晋作のような人材でしょう。密航してでも目を覚まさせようと行動する人でないと国民の心に火がつきません。日本の国体と歴史への強い誇りと自負が、松陰や高杉を生みました。政治家に確固とした歴史観がないと歴史カードに勝てません。

24日 外国には、反論せよ

かって訪中したて折、釣魚(ちょうぎょ)台で中国共産党国際局長が「歴史を鑑に」と演説し、盧溝橋事件は日本軍がしかけたと言いました。そこで私が「盧溝橋事件で中国の軍司令官が謝罪している文書を持っている。どうして日本軍がしかけたと言えるのか」と反論したら、急に休憩になって答えは聞けないまま終りました。 

25日 異議あり!

彼らは分っているのです。日本が、唯々諾々として彼らの言うことを聞いてばかりいるのでやられてしまう。日本の政治家は、「異議あり!」と言える歴史知識を持つべきですね。

26日 田母神

「異議あり!」と言え
私も航空幕僚長の時に訪中した時、中国軍の制服組トップが延々と日本の過去の悪口を言うのです。私はたまりかねて、「あなたは満州生まれだそうだが、満州の人口統計を知っているか。満州帝国ができた1932年初めには3千万人だったが、1945年には5千万人を越えて14年間で2千万人も増えている。これは治安が良かったからだ。中国はなぜ、日本にだけ謝れというのか。アヘン戦争をしかけたイギリスには、日本の十倍言うべきではないか」と反論したら、彼は驚きながらも「歴史認識の違いを超えて軍の交流を進めましょう」と言った()。今や、中国の軍事的優位だけでなく、歴史カードが水戸黄門の印籠のように日本人を圧倒しています。
27日 浜口
歴史認識で腰砕け
お二人とも、すぐに「異議あり!」とボールを投げ返していますが、そういうリーダーが日本に何人いるでしょうか。自国の近現代史を知らないで、ロシアや中国、韓国に何も反論できないでしょう。理論武装が全く出来ていません。日本は武力で反撃する前に歴史認識で腰砕けになり、その結果、領土まで奪われようとしています。
28日

衣の下の(よろい)を見せよ

浜口

政治家として忘れてはならない重要な問題の一つに拉致問題があります。しかし、リーダーには「自分が平壌に乗り込んで奪還する」という気概は皆無です。情けない限りです。
29日 田母神

首相が自衛隊に「北挑戦にいる拉致被害者を救出しに行くから、任務達成のための部隊を作って訓練を開始せよ」と言っただけで、北朝鮮は拉致被害者の返還交渉に応じてくる可能性があります。対話と圧力と言いながら、実際は対話だけでしょう。これでは北も交渉には応じません。時には「なめたら、怖いぞ」と衣の下の鎧を見せないとね。

30日 山田 事を荒立てるナ、相手を刺激するナばかりですからね・・・・。さきに荒谷卓氏が奔走して陸上自衛隊特殊作戦を作ったのに、宝の持ち腐れです。彼らに、拉致被害者救出の特殊任務を与えるべきでしょう。日本の偵察衛星による情報収集も不充分です。常時、中国・ロシア・北朝鮮を監視する必要があります。これまで、わが国の平和は日米同盟で保たれてきましたが、去年の中間選挙に負けて以降、オバマ大統領の関心は国内問題ばかりです。中露と北朝鮮は今がチャンスと思っています。ロシア軍高官は、北方領土に地対空ミサイルと武装ヘリコプターを配備すると表明しました。日本の領土に、とんでもない話です。日本は、中露を組ませずに互いに警戒しあうように仕向けるよう知恵ょ絞るべきでしょう。