尖閣で米中応酬 「挑発」するのはどちらだ

           2013.6.11 産経主張

 米中首脳会談で、尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐる応酬があった。オバマ米大統領が「行動でなく、話し合いを」と中国側に自制を求めたのに対し、中国の習近平国家主席は「(日本は)挑発をやめるべきだ」と主張した。

 中国は尖閣が「盗取」されたと詭弁(きべん)を弄し、尖閣周辺で公船による領海侵犯を繰り返している。日中のどちらが挑発しているかは明らかだろう。

 オバマ氏が尖閣問題を「長時間」(米側)取り上げたことは、日本の立場も踏まえたもので歓迎したい。しかし、米国は尖閣が日本防衛義務を定めた日米安全保障条約の適用対象であるとの姿勢をとっているにもかかわらず、オバマ氏が明確に言及しなかったとすれば残念だ。

 習氏は「主権と領土を断固守る」と言明した。南シナ海の島嶼(とうしょ)の問題を含め「関係各国が責任ある態度で挑発ともめ事を起こすことをやめ、対話を通じて問題を解決することを望む」と語った。

 尖閣についての中国の領有権主張は石油資源埋蔵の可能性が浮上した1970年ごろからだ。対話で解決というが、そもそも解決すべき領有権問題が存在しない。

 尖閣北方海域で今年1月、海自の護衛艦やヘリが、中国海軍艦艇からレーダー照射を受け、小野寺五典防衛相が「国連憲章上、武力の威嚇に当たる」と抗議した。中国側にこそ、こうしたもめ事を起こさないよう求めたい。

 オバマ氏は習氏に対し、第三国の主権問題には立ち入らない米国の原則を示し、外交解決を目指すべきだと主張した。だが、ケリー国務長官らが「尖閣は日本の施政下にあり、現状を変更しようとするいかなる一方的な行為にも反対する」などと指摘しているのに比べれば抑制的だ。

 米中首脳会談は2日間計8時間に及び、非核化に向けた北朝鮮への圧力強化などでも合意した。両首脳が率直な意見交換の場を持つことは歓迎できる。

 安倍晋三首相は「世界の平和と安定にとってはいいことだ」と両首脳の対話について指摘する一方、「日米は同盟関係でこれは米中とは決定的な差だ」と述べた。17、18両日の英国での主要国首脳会議(サミット)の場などを利用して、今回の会談について米側に詳しい説明を求め、対中国での連携を確認してほしい。