614日 本当の文明生活

 社会生活を便利にして装飾する機械的組織的成功が文明の本義ではない。誠に南洲の言の如く「道の(あまね)く行わるる」が文明の本義でなければならぬ。道とは何の謂であるか。即ち天地生成化育のはたらきである。人も道に由って生きる。天地の道に由て父母を得、己に生きることを知り、人を愛することを覚え、天を敬する様になる。言い換えれば肉体的生活より之をつつむ精神的生活へ、個人的生活より超個人的生活へ発展する。国家生活に於ても、国民が単なる経済的利己的生活に止まらずして、一層高く大いなる価値的生活に進んで居ればおれば居るほどに文明と謂われるのである。        日本精神の研究