616日 煩悩の震源地

 お前(楊茂という聾唖者)は、口が善いとか悪いと言うことが出来ないので、どうでもいい批評・批判、そんなものを省いてしまうことができる。また聴いても聴こえなくても、どうでもいいようなことを省くことができる。

お前は聴けない、口に言えない聾唖であるということは、考えてみれば随分無駄な是非、無駄な煩悩を省けることになる。

こうして見ると、お前は耳も聴こえる、口もきける他人にくらべたら、お前のほうがよっぽど、快活自在、愉快じゃないか。

こうした指摘は、ちょっと人の気のつかぬ面白いことである。           知命と立命