徳永圀典の「論語」 D
平成19年6月
1日 | 王孫賈問うて曰く、其の奥に媚びんよりは、寧ろ竈に媚びよとは、何の謂いぞや。子曰く、然らず。罪を天に獲れば、祷る所無きなり。 |
王孫賈、問曰。與其媚於奥。寧媚於竈。何謂也。子曰。不然。獲罪於天。無所祷也。
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色々喩えで孔子は言う。 |
3日 | 子曰く、周は二代に監みて、郁郁乎として文なるかな。吾は周に従わん。 |
子曰。周監於二代。郁郁乎。文哉。吾従周。 八いつ第三編・第十四
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孔子が文武を憲章する所以を述べ周公の才徳・文武を褒めたもの。 |
5日 | 子、大廟に入りて、事ごとに問う。或ひと曰く、孰か?人の子を禮を知ると謂うや、大廟に入りて事ごとに問う。子、之を聞きて曰く、是れ禮なり。 |
子入大廟毎事問。或曰。孰謂?人子知禮乎。入大廟毎事問、子聞之曰。是禮也。
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禮は敬を以て主とする。 学んでいても、廟では、一々聞いて過失なきよう丁重にするのが禮である。 |
7日 | 子曰く、射は皮を主とせず。力、科を同じくせざるが為なり。古の道なり。 |
子曰。射不主皮。為力不同科。古之道也。
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的の皮を貫くだけが射の禮ではない。 これが古の道である。 |
9日 |
子貢、告朔の?羊を去らんと欲す。子曰く、賜や、女は其の羊を愛む。我は其の禮を愛む。 |
古貢欲去告朔之?羊。子曰。賜也爾愛其羊。我愛其禮。 |
孔子は小さい費用を惜しんで古来からの大礼を廃める非を言ったものである。 |
11日 | 子曰く君に事うるに禮を尽せば、人以て諂えりと為すなり。 |
子曰。事君尽禮。人以為諂也。 |
当時の君臣が禮を失ったのを見て孔子の嘆息である。 |
13日 | 定公問う、君、臣を使い、臣、君に事うること、之を如何にせん。孔子對えて曰く、君、臣を使うに禮を以てし、臣、君に事うるに忠を以てす。 |
定公問。君使臣。臣事君。如之何。孔子對曰。君使臣以禮。臣事君以忠。 |
孔子は言う、 君たる人、臣下を使うに禮を以てすれば、臣は必ず君に忠を以て仕えましょう。 |
15日 | 子曰く、関雎は楽しみて淫せず、哀しみて傷らず。 |
子曰。関雎楽而不淫。哀而不傷。 |
音楽が中正で、哀楽ともにその調和がとれていたので褒めた言葉。 |
17日 | 哀公、社を宰我に問う。宰我對えて曰く、夏后氏は松を以てし、殷人は柏を以てし、周人は栗を以てす。曰く、民をして戦栗せしむるなり。子之を聞きて曰く、成事は説かず、遂事は諌めず、既往は咎めず。 |
哀公問社於宰我。宰我對曰。夏后氏以松。殷人以柏。周人以栗。曰。使民戦栗。子聞之曰。成事不説。遂事不諫。既往不咎。 |
社は土地神。その地味に適する樹を植え神主とす。松なら松社、柏は柏社、栗は栗社。哀公が宰我に問うと社名のみ答えた。 孔子はこれを聞き、既に成就したことは是非しても無用だから説かぬ。既往は責めても追えないから咎めないと答えた。 孔子の真意は、宰我を戒め今後慎めたとされる。 |
19日 | 子曰く、菅仲の器は小なるかな。或ひと曰く、菅仲は倹なるか。曰く、菅氏に三帰あり、官の事は摂ねず、焉んぞ倹なるを得ん。 |
子曰。菅仲之器小哉。或曰。菅仲倹乎。曰。菅氏有三帰。官事不摂。焉得倹。 |
菅仲の器は小さい。 また奢侈にして倹約がないと。 |
21日 |
然らば則ち菅仲は禮を知るか。曰く、邦君、樹して門を塞ぐ、菅氏も亦樹して門を塞ぐ、邦君、両君の好を為すに反てんあり、菅氏も亦反?あり。菅氏にして禮を知らば、孰か禮を知らざらん。 |
然則菅仲知禮乎。曰。邦君樹塞門。邦君為両国之好。有。菅氏亦有。菅氏而知禮。 不知禮。 |
また、菅仲は上を潜して屏を設けて門内を覆っている。 また酒台の反てんを家の中に作って禮を失していると孔子は断言する。 これは禮を知るということではない。 |
23日 | 子魯の大師に楽を語りて曰く、楽は其れ知るべきなり。始めて作すに翕如たり。之を従ちて純如たり、t如たり、繹如たり。以て成る。 |
子語魯大師楽曰。楽其可知也。始作翕如也。従之純如也。t如也。繹如也。以成。 |
古来、シナでは禮楽と言い、教育、政治上重要、だが周末には楽官の大師さえ精通を欠け孔子はそれを告げたものである。 |
25日 | 儀の封人、見えんことを請う。曰く、君子の斯に至るや、吾未だ嘗て見えること得ずんばあらざるなり。従者之を見えしむ。 |
儀封人請見。曰。君子之至於斯也。吾未嘗不得見也。従者見之。出曰。 |
儀の官人が孔子に面会を請うた。それで弟子は面談を許した。 |
27日 | 出でて曰く、二三子、何ぞ喪うことを患えんや。天下の道無きや久し。天将に夫子を以て木鐸と為さんとす。 |
二三子何患於喪乎。天下之無道也久矣。天将以夫子為木鐸。 |
二三子は孔子の2−3人の随行者。 |
29日 | 子、韶を謂わく、美を尽せり、又善を尽せり。武を謂わく、美を尽せり、未だ善を尽さざるなり。 |
子謂韶。尽美矣。又尽善也。謂武。尽美矣。未尽善也。 |
韶はその音声、舞容共に申し分なし。 武王のそれには韶のような善を尽くすものが無い。 |
30日 | 子曰く、上に居りて寛ならず、禮を為して敬せず、喪に臨みて哀しまずんば、吾何を以てか之を觀んや。 |
子曰。居上不寛。為禮不敬。臨喪不哀。吾何以觀之哉。 |
凡そ上に立つ人は、官民ともに、寛大の度量が無ければ大衆は服しない。 禮は恭敬の心が主、喪は節文が良くても一片の哀戚の心が無ければ徒らな行為となる。 |