620日 清風の境地

 作者は豊後の人。名は晋。徳川時代後半を通じて、さすがに偉人傑士も多いが、その人格・学問・徳行・経綸・あらゆる点において、群をぬきんでているのはこの人など確かに第一人者で、真に頭の下がる人である。この詩は晩年久留米侯の招聘の内意を伝えられて謝絶した時に、その使の人に示した作である。

木こりの通う路は世間には通じません。東山に隠居してはいますが、かの謝安(晋の名宰相)のように、乃公出でずんば天下の蒼生をいかんせんとといったようながらではありません。自分に馴染んで、私はもう年とりました。清風のかなた、白雲の中、鶴がないているでしょう。

              光明蔵