自民党時代より非道い 屋山太郎 

米欧の民主主義国家と比べると日本は紛れもない官僚統治国家だ。明治の官僚内閣制が色濃く残っていて、その統制体質が国の活力を削いでいる。

この統制体質を許してきたのは官僚と癒着して共存共栄を図ってきた自民党だ。一つの党が約60年も政権を握っていること自体が異常な国家だったと認識すべきだ。

この官僚主導国家を匡正するために小選挙区制度を導入し政権交代に漕ぎ付けた。

官僚主導の象徴であった事務次官会議廃止までは良かったが、民主党はそのあとの統治方法について無知過ぎた。初めて政権を獲ったからと言い訳は出来ない。 

官僚内閣制の改革に着手したのは安倍晋三氏で、渡辺喜美氏(現みんなの党代表)が行革担当相として「公務員制度改革基本法」を成立させた。改革の工程表は既に基本法の中に示されており、手順通り進めばおのずと、「脱官僚」=「政治主導」に行き着くはずだった。 

民主党はこの工程づくりを省いたことから(つまづ)き始める。官僚なかんずく財務省は内閣人事局、国家戦略局、行政刷新会議は設置法なしで開始したから、折角の事業仕分けが官僚に無視されることになった。

国の出先機関は「原則廃止」と昨年6月、閣議決定したが、内閣人事局や国家戦略局が法制化されていない為に強制力がない。

国の出先機関職員約20万人については予て地方自治体との二重行政が指摘されていた。地方整備局8、農政局7の人件費は2兆円に近く、事業費、交際費は一局長が1兆円を動かすと云われた。無駄の巣窟のような部署だ。 

民主党が大声で叫んだ「天下り根絶」は、自民党時代より(ひど)くなった。政党のマニュフェスト(公約)が、これ程軽いとは誰も思わなかったろう。

これを主導したのは反米、親中の小沢一郎氏で、政策ゼロ、政局オンリーの人物だ。

加えて、政界で唯一、カネに汚い人物が民主党の側にいたことが不幸の始まりだった。