6月30日 (メイ)法子(ファーズ) その三

 然し、実は何も信ずるものを持たないということは、人間として堪えられない。淋しいことですから、そうなればなるほど現世的なるもの、何物をも信ずることができない、頼ることができないと言う時に、しからば何を頼るのかというと、不変のもの、永劫のものでなければならない。それは何だというと、結局人間そのもの、人間の本質であるということになるわけです。最も簡単に言えば裸の人間である。そこで何物をも信ずることのできない中国人は、他の何物よりも人間を信ずる。それでは人間の一番人間的なるもの、本質的なるもの、それは何かと言ったら、人間の徳義というものです。だから中国人は徳義というものに本能的に敏感です。        十八史略