(ほぎょう)(しゅせい)

保守ということについて思い出す一つの文章があります。それは孔孟とか老荘とかの説ではなくて、非常に現実的な兵書である「呉子」の中に、保守ということについて卓越した考えがあるのです。

それによると、保守とは「保業(ほぎょう)守成(しゅせい)」、

すなわち、業を保ち、(せい)を守るという意味の言葉で「創業(そうぎょう)(すい)(とう)」を承けるものです。
 

これは孟子にもありますが、一世が業を創め、統を垂れる、

すなわち、立派な第一代が苦心して仕事を始め、その仕事を後々まで継承されるように伝える、これを創業(そうぎょう)(すい)(とう)という。

自分一代で駄目になるような軽薄なものではなく、二世も三世も自分の遺す方針に従って行けば、ちゃんと事業を守って行ける――つまり歴史を作ることができるようにすることが一世の使命である。

この先代の創業垂統を継いで、その業を保ち、先代の成功をよく守って行く。これが保業守成で「保守の意」であります。

         安岡正篤先生の言葉