1.  危険なことは何か

「知識は心のげつなり。才能は身の(よう)なり。貴寵(きちょう)は家の禍なり。(ふう)(そく)は子孫の(わざわい)なり」

これは中々、真実を突いて含蓄のある言葉だ。

知識は心の禍、即ち?(げつ)であり、才能は身を迷わすもの、位が高い人物に贔屓にされるのは家の禍、富んで満足するのは子孫の(わざわい)だという、(わざわい)は、感嘆的表現で、気の毒に、ああ、それは禍だなあだ。

頭がよくて余計な知識が豊富だと、心の良心を害い、悪いことに使ってしまう。才能も、なまじ有ると溺れてしまい悪事に活用してしまう。知識は知識に破れ、才能は才能で失敗はままあることだ。

それを防ぐには、先生は、知識を自分の心を通して活かす、才能は自分の心身を通して活かせと言われる。この事を自覚しないと身を滅ぼす危険があると。

寵愛されても、いつ政変があって本人が没落かれば自分の家の没落という禍になりかねない。企業でも同様なことが言える。

財力が豊かなことは子供に禍をもたらす、美田は残さぬのも知恵ではある。