民主党の変節にどう対処するか 森永卓郎
民主党政権は、財源が無いからマニュフェストを実行できないのではない。今の執行部は、実現するつもりはないのだ。
民主党は政治思想が大きく異なる二つのグループを抱えている。
一つは、改革派グループで、官僚、財界、そしてアメリカと対決しようとする、その代表が小沢グループ、鳩山グループだ。
もう一つは守旧派グループで、官僚、財界、アメリカの利権を守ろうとする。その代表が前原・野田グループだ。
2009年の総選挙時のマニュフェストは、小沢一郎氏が代表代行を務めていたこともあり、改革派の思想を中心に作られている。だから、政権発足時には、改革を実現する為に、官僚の答弁を禁止し、日本経団連とは幹事長となった小沢氏が一切面接せず、そして普天間基地は最低でも県外という方針だった。
処が、鳩山総理の普天間問題の変節と辞任によって、前原・野田グループと菅総理が手を握ってクーデターを起した。
総理の椅子が欲しい菅氏と、実質的な権力を握りたい前原・野田グループの利害が一致したのだ。
民主党国会議員の中で、前原・野田グループは六分の一の人数を占めるに過ぎない。その小所帯がいま民主党を実効支配している。
彼らの政治理念は自民党に近いから、09年の民主党マニュフェストを次々と否定し続けている。財源不足が政策変更の原因でないことは、普天間基地の辺野古移転やIPPへの参加方針を考えれば明らかだ。財源のかからない問題でも、明らかに基本方針は転換しているのだ。
クーデターが成功した要因は、小沢一郎元代表の政治資金問題だった。しかし、前原・野田グループが狙っているのは、小沢一郎の政治的抹殺だけでなく、小沢派・鳩山派の掲げた政策の一掃だ。
その為に、彼らが導入した組織原則は、レーニン主義の政党が採用する民主集中制だ。民主的な選挙で代表を決めたら党員はその方針に従わなければならないというものだ。
私は解散総選挙の前に、小沢派、鳩山派が新党を作るべきだと思う。そうしないと、民主党の本来のマニュフェストを支持する人たちが選挙での投票先を失ってしまうからだ。