人間の基本は「情」 

論理は豊かな直感ありてこそ

人間の心身も過労すると酸化する。酸を(いた)むと()むのはえらいものである。酸敗、心酸などという古語に頭が下がる。

健康の時、体内は弱アルカリ性である。 

人間精神も、知性は陽性である。物を分つ、ものわかりである。認識とは物の区分・区別をはっきりさせることである。 

それによって概念を得る。その分化を発展させる手段が論理である。だから概念的・論理的、つまり理屈になるほど、根幹・全一・生命から遠ざかる。中味が無くなる、くたびれる。 

概念的論理的知識は豊かな直感に基づかねば浅薄であり危険である。 

人間の基本は「情」 

知性に比して言えば、情性は陰である。情は物を結び、物を含蓄する作用である。

偉人は必ず偉大な情の人でなければならぬ。その情も(ゆう)(じょう)を貴ぶ。皮相な感情は危い。 

意思も欲求は陽であるが、反省は陰である。反省のない欲望ほど危いものはない。 

徳性が人格の本体 

才能は自己を外界に働かせる能力であるから陽性である。だから知も才もとかく利己的になって、人から好まれない。他との調和を破る。 

これに対して、徳というものは、物を容れ、物を結ぶ能力で、陰である。 

徳性が人格の本体で、知や才はその用である。 

安岡正篤先生の言葉