三等車旅行 イサベラ・バード

「私達は三等車で旅行した。平民の振る舞いを是非共見てみたかったのである。客車の仕切りは肩の高さしかなくて、忽ち最も貧しい日本人で満員になった。三時間の旅であったが、他人や私達に対する人々の礼儀正しい態度、そして総ての振る舞いに私は、ただただ感心するばかりだった。 

それは美しいものであった。とても礼儀正しくしかも親切。イギリスの大きな港町で多分目にする振る舞いと較べて何と言う違いだろう。

さらに日本人は、アメリカ人と同様、自分や周りの人への気配りから清潔で見苦しくない服装で旅行している。

老人や盲人に対する日本人の気配りもこの旅で見聞した。私たちの最も良いマナーも、日本人のマナーの気品、親切さには及ばない」とイサベラ・バードは言った。 

英語の最高の日本旅行記

イサベラ・バードはイギリス生まれの旅行家である。彼女の書いた「日本奥地紀行」の日本評価である。 

世界を旅し、庶民の暮らしを観察した彼女は日本人の多くの長所を指摘した。特に日本人の礼儀正しさには感動しきりであった。21世紀の世界の中の日本人と少しも変わらなく秀いでている。 

日本人の様子は

イザべラは、日本の平民でさえ節度があり、老人や盲人に対する気配りも素晴らしく、自国イギリスも及ばないと絶賛した。

馬子は「馬に乗る時には、背中を踏み台にしてくれた」り、「両手一杯の野いちごを持って来てくれた」りして全力で援助してくれた。 

人力車の車夫は「いつも私の衣服から塵を叩いてとってくれたり、私の空気枕を膨らませたり、花を持って来てくれたり」、「どこでも警察は人々に対して非常に親切」と感激している。 

安全に女独り旅の出来る国

彼女の来日は、1878年であるから、明治11年。「奥地や北海道を1200マイルにわたり旅したが、全く安全で、然も心配もない。世界中で日本ほど、婦人が危険にも不作法な目にも逢わず全く安全に旅行できる国は無い」と。 

彼女の旅行計画を聞いた英国代理領事が彼女に「英国婦人が一人旅しても絶対大丈夫でしようでしよう

」と太鼓判を押していたのである。 

日本は文明国であり民度も高いのである。この日本人の先祖のことを誇りにしていない日本人が残念である。西洋の方が余ほど野蛮国なのである。 

勤勉・真面目・読書家の日本人

イサベラ・バードは、日本人を勤勉、真面目、よく働くと繰返し述べている。「山腹を削って作った僅かな田畑も、日あたりのよい広々とした米沢平野と同様に素晴らしくきれいに整頓してあり、全くよく耕作されて風土に適した作物を豊富に産出している。これはどこにも見られる。草ぼうぼうの「怠け者の畑」は日本には存在しない」 

子供の読書の声

日本の庶民の読書について記載されている。「日光地方では、夕方には殆ど、どこの家からも予習のために本を読む子供の声が聞えてきたと言う。

田舎、都会に関わらず、本を読み、従者の日本青年も十冊ほどの本を脇に置き、読んで夜を過ごすという。江戸時代は貸本業はとてもポピュラーで多くの人々が利用した。庶民でも本を読む、つつまり識字できるという点は世界に於いて抜きん出ている。 

恥ずべきことだと

イサベラ・バードが暑くて困っている時、日本の女性達は団扇(うちわ)を持って来て一時間も扇いでくれた。料金を尋ねると少しもいらないと言い全く受け取らない。そして言うには「少しでも取ることがあれば恥ずべきことだ」と。

悪い水を飲んで具合の悪くなった車夫は「契約を厳重に守り代わりの者を出し、病気だからと云ってチップを要求することもない」その正直で独自のやり方は大変嬉しかった。 

紛失した時

「旅の終わりまで無事に届けるのが当然の責任だと、どうしてもお金を受け取らなかった。」

自分の責任で仕事に力を尽くし、それ以上の金は受け取らないという誠実な態度が目立つと言った。 

イギリス人が劣る

このような明治初期の日本人を見て彼女は言う「この日本国民と比較して、常に英国民が劣らないように・・・・」

「・・・残念ながら実際には英国民が劣っている・・・」と述べているのだ。このように日本文化、モラルは欧米人より高いのに、どうして西洋文明を貴ぶのか。ここに日本堕落の原点がある。 

平成20年6月7日

徳永日本学研究所 代表 徳永圀典