| 1日 | 25 | 
 
          
            | こころはふるいたち 精進つつしみて おのれを理のうるもの かかる賢き人こそ 暴流もおかすすべなき 心の洲をつくるべし | 心を奮い立たせ、勤しみ励み、自制と自己統御をする賢明な人は人生の荒波に流されることはない。それは生きる氾濫の川に島があるようなものだ。
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      | 2日 | 26 | 
 
          
            | 智慧にとぼしき おるかなる人は 官能のままに おぼれしたがう されど心ある人は 上なき財宝のごとく 精進を尊び守るなり | 智慧がなく愚かな人々は本能のままに享楽する。賢い人はただ精進する、この上ない宝を守るように。
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      | 3日 | 27 | 
 
          
            | 放逸におぼるるなかれ愛欲のたのしみを 習いとするなかれ まこと いそしみと 思い静かなる人こそ 上なきの安楽をえん | 本能のままの享楽を追い求めてはならぬ。愛欲の楽しみにふけるな。
 思いを静め懲らして努めいそしむ人こそ豊かな幸せが得られる。
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      | 4日 | 28 | 
 
          
  | はげみもちて 放逸を却けし賢人は 智慧の高閣にのぼり こころにうれいなくして 憂ある愚衆をみおろすなり 山頂に立つひとの 地に在るものをみるごとく | 励み勤しむことにより放逸にならない賢い人は憂いがなく、恰も山頂で愚かな群衆を見下ろすようなものである。 |  | 
    
      | 5日 | 29 | 
 
          
  | 放逸の人の中に ひとのいそしみ うち眠る人の中に ひとりよくさめたるかくの如き智者は かの足駿き馬のおそき馬を駆けぬくごとく彼は足早く走りゆくなり | 放逸な生活をしている人の中にいて励むとか、よく眠る人の中にいて独り醒めたとか、このような賢い人は丁度、か弱い馬を駿馬が群を抜いて駆け抜けるようなものである。 |  | 
    
      | 6日 | 30 | 
 
          
  | マガヴァーと名づくる神は 精勤あるによりて 諸神のうちに主となれり 精勤はひとみな ほめたたえ 放逸はつねに いやしめられる | 帝釈天は精励により諸神の首位を得た。精励こそ褒め称えられる、怠惰は卑しいことだ。 |  | 
    
      | 7日 | 31 | 
 
          
  | いそしむことに 心たのしみ 放逸に怖れをいだく 道を求むる人はあるは粗き あるは細き こころの纏のすべてを やきつくす炎のごとく歩みゆくなり
 | 励み努めて怠惰放逸を怖れる人は燃え盛る炎のように、心の障碍となる粗雑なものも、微細なものも焼く尽くして生涯を過ごすことができる。 |  | 
    
      | 8日 | 32 | 
 
          
  | いそしむことに 心たのしみ 放逸に怖れをいだく 道を求むる人は 退堕の ことわりなく すでに 涅槃に近づけり | 精進の中に楽しみを、堕落放逸の中に怖れを見出す人は、もはや自在な精神に近づいており退歩することはない。 |  | 
    
      | 9日 | 第三品 心意(精神)33 | 
 
          
  | こころはざわめき動き 持りがたく 調えがたし されど 智者はよくこれを正しくす 箭をつくるものの 真直に箭を矯めるがごとし | 心というものは騒ぎ動くものだ。だから心を制御することも守ることも、極めて難しい。然し智慧ある人間は、矢造りの名人が矢を真直ぐにするように心を直ぐにさせる。 |  | 
    
      | 10日 | 34 | 
 
          
  | 棲み家なる 水を離れて うるおいもなき 陸の上に なげすてられし 魚のごとく 誘拐者の領土を のがれんとて 心ひたすらにたち騒ぐ | 水中から水のない陸上に投げ捨てられた魚のように、我々の精神・心は、魔者の罠から逃れようとして震え慄いている。 |  | 
    
      | 11日 | 35 | 
 
          
  | こころは保ちがたく かるくたちさわぎ 意のままに 従いゆくなり このこころを ととのうるは善し かくととのえられし心は たのしみをぞもたらす | 心は常に騒ぎ動いて、意思の欲するままに至る所で享楽しようとする本当に抑え難いものである。だから、このような心を制御しようとする事は誠に善いことだ。
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      | 12日 | 36 | 
 
          
  | こころはまこと見がたく まこと細微にして 思いのままにおもむくなり 心あるひとは このこころを護るべし よくまもられしこころは たのしみをぞもたらす | 心はほんとうに見えないし微細なもので 気持ちの赴くままに動く 賢い人は それを護りなさい この心を護り慎めば自然と心の楽しみをもたらすであろう。 |  | 
    
      | 13日 | 37 | 
 
          
  | こころは遠く去りゆき またひとりうごく 密室にかくれて 形なし かかる心を 制うる人々は 誘惑者の 縛を脱れん | 心は遠くに行き、唯一人さまよい歩き、何らの形もない、見えない部屋に隠れている。このような心を制御できる人こそ誘惑者の呪縛から解放される。 |  | 
    
      | 14日 | 38 | 
 
          
  | こころ 安住するなく 正しき真理を知らず 信ずること 定まらざれば かかる人に 智慧は満つることなし | 心が定まらず 真理を学ぶことが無く 従って確信も無ければ 智慧の完結には至り得ない。 |  | 
    
      | 15日 | 39 | 
 
          
  | こころ貧染をはなれ おもいみだるるなく 善福と 罪悪と ふたつながらに とらわれざる かかる覚悟ある人に 怖畏あることなし | 精神は拘束されない、思慮は誰にも惑わされない、善とか悪とかを超えた、これらを悟った人は何も怖れるものはない。 |  | 
    
      | 16日 | 40 | 
 
          
  | わがこの身をば うつろなる瓶のごとく 脆きものと知り わがこの心をば 城塁のごとく守り 智慧の武具もて 誘惑者とたたかい 巳に勝ちえたるは是を守りて 心におこたりをもつ勿れ | この肉体は、あの脆い水瓶のようなものだと理解し、この心を、あの強靭な城壁のようなものとなして、理智の武器を持って誘惑の魔物と戦い、既に打ち克ったものを護って決して安堵しないことだ。 |  | 
    
      | 17日 | 41 | 
 
          
  | げに久しからずして この身は 地上によこたわらん 意識失われては かえりみる人もなく 用もなき 木の端のごとくならん | おお、やがてこの肉体は横たわることになろう。その肉体は意識は無く、捨てられて、無用なものになる、あの木の端のように。 |  | 
    
      | 18日 | 42 | 
 
          
  | うらみをいだく人の そのうらみあるものに よしいかなる害をなすとも または かたきをねらう人の そのかたきに よしいかなる害をなすとも おのが邪僻の心に作せる その禍にすぎたるもの よも誰か作しえんや | 憎しみを抱く人が憎んでいるものに対して害をしたり、怨みを持つ者がその敵に対してどのような害をしようとも、間違ったその心は本人自身の上に更にさらに大きな害悪をもたらすであろう。 |  | 
    
      | 19日 | 43 | 
 
          
  | 母も 父も はた 親族も たとえいかなる たすけをなすとも 正しき心もて作せる さいわいにまされるもの 誰かなしえん | 父母がどのような幸せを与え、また親族がどのような幸福を与えようとも、自分の正しい心は更なる大きな幸福を与えてくれる。 |  | 
    
      | 20日 | 第四品 華44 | 
 
          
  | 誰かこの地をのりこえん 誰か亦この死の世界と 神々をもつ世界とを のりこえん かの巧みなる職人の 華をつみ集むるごとく 善く説かれたるこの法句 つみ集むるものは誰ぞ  | 誰がこの大地を支配するのか。誰がこの死の世界と神々の世界とを支配するのか。それは賢い人が花を摘み集めるように誰が善の示された真理の教えの法句を積み集めるのであろうか。
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      | 21日 | 45 | 
 
          
  | 学はんとする人こそ この地をのりこえ またこの死の世界と 神々をもつ世界とをのりこえ 学ばんとする人こそ かの巧みなる職人の 華をつみ集むるごとく 善く説かれたるこの法句を つみ集め得ん | 聖ならんと務めている者はこの大地、死の世界、神々の世界を悟ることができる。賢明な人とは、ちょうど花を摘み集めるようなもので、この法句に示された真理を悟り得るのである。
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      | 22日 | 46 | 
 
          
  | この身をば 泡沫のごとしと知り 陽炎のごとき存在と ふかく覚るものは 誘惑者の射はなちたる 華の箭を抜きすてて 死王のすがたなき 聖地にいたらん | 肉体は泡沫のようなもの、かけろうのようなものと知り、誘惑の魔の矢を破れぱ死王の姿を見ることのない聖地に行ける。 |  | 
    
      | 23日 | 47 | 
 
          
  | わき目もふらず 華をつみ集むる かかる人をば 死はともない去る まこと 眠りにおちたる 村をおし漂す 暴流のごとく | 愛欲に心を奪われて、ひたすらその華を摘み取る人は死に伴われてしまう。それは眠っている間に洪水で押し流されているようなものだ。 |  | 
    
      | 24日 | 48 | 
 
          
  | わき目もふらず 華をつみ集むる かかる人をば もろもろの愛欲に いまだ飽かざるうちに 死はその支配に 伏せしむ | ひたすら愛欲の華ばかり摘む人は、愛欲に飽くことを知らぬ間に、死はその人を従え伴うてしまう。 |  | 
    
      | 25日 | 49 | 
 
          
  | 花びらと色と香を そこなわず ただ蜜味のみをたずさえて かの蜂の飛び去るごとく 人々の住む村落に かく牟尼は歩めかし | 蜂が花や色や香を損うことなく、ただ蜜の味を捉えて去ってしまうように、智慧ある人間は村々を遊行するがよい。 |  | 
    
      | 26日 | 50 | 
 
          
  | 他人の邪曲を 観るなかれ 他人のこれを作し かれの何を作さざるを 観るなかれ ただおのれの 何を作し 何を作さざりしを 想うべし | 他人の過失や、他人がしてはならぬ事をしたり、しなくてはならぬ事を怠ったりした事は見ないことだ。自分が何をし、何を怠ったかを考えることだ。 |  | 
    
      | 27日 | 51 | 
 
          
  | まこと いろうるわしく あでやかに咲く花に 香なきがごとく 善く説かれたる語も 身に行わざれば その果実なかるべし | 色の美しい、心を動かすような花が香を失ったように、いかに巧みに語る言葉も実行が伴わなければ果実は無いと言える。 |  | 
    
      | 28日 | 52 | 
 
          
  | まこと 色うるわしき咲ける華に 香の伴うごとく 善く説かれたたる語は これを身に行うとき はじめて その果実はあらん  | 色が美しく目が覚めるような花に芳香があるように、巧みに述べられた言葉を実行すれば、そこで初めて実るというものである。 |  | 
    
      | 29日 | 53 | 
 
          
  | うずたかき華堆より かずかずの華の鬘を 作りえん かくのごとく ここに生まれたるもの ここに死すべきものの なしとげうべき 善きことは多し | うず高く摘んだ花から沢山の花鬘が作れるように、生まれた者はやがて死ぬが、なしておかねばならぬ多くの善行がある。 |  | 
    
      | 30日 | 54 | 
 
          
  | 華の香は 風にさからいては行かず 栴檀の多掲羅も 末利迦もまた然り されど 善人の香は 風にさからいつつもゆく 善き士の徳は すべての方に薫る | 花の香りは風に逆らっては匂わない。センダンもタガラもマリカでも同様だ。然し善をなす人の香りは風に逆らっても匂う。
 気高い人間の香りはどこでも匂う。
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      | 31日 | 55 | 
 
          
  | 栴檀と多掲羅と 青蓮華と はた跋師吉と このもろもろの 香のなかに 戒の香こそ 最上なり | 栴檀とタガラのかもす香りはほのかであり遠くにはゆかない。然し道徳の香りは遥かに神々の間にまで匂って例えようもない。
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