神社庁 青年神職研修会「徳永圀典の講話」A 於米子市皆生温泉
                                 平成183月講演記録   

神道風の書き方で編集

1日

さういふことを実はヨーロッパ人でもわかってゐるんです。これ、御存じの方もあると思ひますが、平成三年に日本の傷痍軍人会代表団がオランダに行ったときにアムステルダムの市長が言った言葉。これを全部読んでみます。

2日 「あなた方、日本は先の大戦で負けて、勝った私どもオランダ人は勝ったの大敗をしました。今、日本は世界一、二位を争ふ経済大国となりました。私たちオランダ人はその間、屈辱の連続でした。即ち、戦争に勝ったはずなのに世界一の貧乏国になりました。戦前はアジアに本国の三十六倍もの大きな植民地、インドネシアがあって、石油、資源、産物で本国は栄耀栄華を極めてゐました。今のオランダは日本の九州と同じ広さの本国だけとなり、あなた方日本はアジア各地で侵略戦争を起こして申しわけないと、諸民族に大変迷惑をかけたと、自分をさげすみ、ペコペコ謝罪してゐますが、これは間違ひです。あなた方こそ、自らの血を流して東亜民族を開放し救ひ出す、それは人類最高のいいことをしたのです。あなた方の国の人々は過去の歴史の真実を目隠しされて、今度の大戦の目先のことのみ取り上げ、あるいは洗脳され、悪いことをしたと、自分で悪者になってゐますが、ここで歴史を振り返ってみる必要がある。本当は白人が悪いのです。百年も三百年も前から競って武力でアジア民族を征服し、自分の領土として勢力下にしました。植民地や属領にされて長い間、奴隷的に酷使されてゐた東亜民族を開放して、ともに繁栄しようと理想を掲げてきたのが大東亜戦争ではありませんか。本当に悪いのは侵略して権力を振るっていった西洋人です。日本は敗戦したけど、アジアの開放はできた。その結果、アジア諸民族はおのおの独立を達成した。日本の功績は偉大です。血を流して戦ったあなた方こそ、最高の功労者です。自分をさげすむのをやめて、堂々と胸を張って誇りを取り戻してください。」
 私が本、三冊目を出しまして、商業出版しろと言はれて、今日持ってきてをりますが、その「人類最高の良いこと」といふのはここから出したんです。これをやることが日本人に今、必要なことだと思ひますよね。これは先祖の名誉を回復することなんですから。
 それなのに、広島の原爆の慰霊塔に行きますと、何て書いてあるか御存じですね。「再び過ちを起こしません」。これ、主語はだれですか。アメリカ人ならわかりますよ。これが日本人だとすればナンセンスと思はれません? 主語はアメリカ人ならわかるが、日本人が「再び過ちは起こしません」。アメリカに原爆を落として殺されたんですよ。これほどぼけてゐる話ありませんね。
3日

僕、日本海新聞に書きましたよ。原水協の人から電話がありましたけど、「何かありますか」と、「いや、何もないです」って言ってましたけどね。もう、恐れたらいけないと思ふんですよね。
 十時四十分までなので、えらい急いでしゃべってをりますけれども、本当に白人は野蛮。皆さん、外国の国歌の歌詞を御存じでせう。外国の国歌の歌詞といふのは血なまぐさいですよ。ちょっと読んでみます。
.ロシア国歌
「鍛えられし わがつわもの 攻めくる敵 討ち破り 断乎と守る 尊き国わが祖国に栄あれ。栄光の民よ 自由の祖国 結ばれしその誉れ 旗のかげで 導けよ勝利の為 進めよや」

4日 2.中国国歌
「立て、奴隷となるな、血と肉もて、築かんよき国。立て!立て!立て!心あわせ、敵にあたらん、進め、敵にあたらん。進め、進め、進めよや」
5日 3.フランス国歌
「ゆけ祖国の国民 時こそ至れり正義のわれらに。旗はひるがえる 旗はひるがえる 聞かずや野に山に 敵の呼ぶを悪魔の如く 敵は血に飢えたり。立て国民 いざ矛とれ 進め進め仇なす敵を葬らん」
6日 4.英国国歌
「おお神よ 我らが神よ 敵をけ散らし降伏させ給え 悪らつな政策と奸計を破らせ給え 神こそ我らが望み 国民を守らせ給え」
7日 5.米国国歌
「おお激戦の後に 暁の光に照らし出された星条旗が見えるか 夜どおし砲弾が飛びかった後に、われらの星条旗が翻っている。自由な祖国、勇敢な家庭 星条旗をふれ 星条旗をふれ 戦闘がやんで微風が吹く中に 濃い朝霧の中 見え隠れしているものは何か これこそわれらが星条旗 神よ!星条旗をふり続け給え 自由の祖国勇敢な家庭の上に」
8日

 こんなんですよ。外国の国歌なんて。その点、日本の「君が代」ってのはすばらしいですね。本当にすばらしい。それなのにもう、小さな声でスポーツ選手が、大きな声で歌ってほしいですねえ。この歌詞がわからんのかなあと、情けない。 「君が代」についてはもう、皆さん御存じでせうから申し上げません。

 それからこれも日本海新聞に書きました。「君が代」を軍国主義になるといふ人間はどうかしてゐます。外国国歌を知らない無知極まる愚かな人とまで書いてやりました。喜んだ人がをりましたけどね。

 私、かういふ講演に出まして必ず祝祭日に国旗をあげてをられますかって質問をするんです。今日はいたしません。神社から国旗いただいてをりますから。しかし大概、一割もありませんよ。情けないですねえ。
 日本語のすばらしさは申しました。日本国字の話も申しました。特にこれは五月の新聞に書かうと思ってをります。今の中国人の政府要人は偉さうに言ってますけど、今日の中国語は日常生活用語から政治制度、経済、法律、自然科学、医学、教育、文化に至るまで、日本語からの借り物だと。これは黄文雄さんといふ台湾人が言ってましたね。それを誇りに持ってほしいと思ふんですよね。

9日

だから、明治維新のいいところは、十八世紀のイギリスの産業革命で西洋は近代法と技術が勝ってをったんです。日本はそれを学ぶだけでよかったんです。そのときに西洋文物の法律と技術を今のやうな新しい国字、和製漢字をつくって、それを中国人と韓国人が学んで、西洋文物が彼らにもすーっと入るやうになったといふことなんですね。
 しかし、最近、だれかの本を読みましたら、牛乳といふのは人間の飲むものでないと。これは欧米人ではもう決まりきったことになってゐるんでね。商売の関係で新聞に書きませんけど。私は何年も前から牛乳をやめてます。もう十年ぐらゐになります。一時、肥厚性鼻炎でしたが治りましたけどね。いや、これね、牛乳屋さんがをられると悪いです。これ、ちゃんとした、資料を持ってゐるんですよ。もう牛乳はさういふ、人間の飲む物ぢゃない。アメリカでは定着してをります。
 しかし、これも日本は戦争直後、飢餓状態で、アメリカから小麦粉とか牛乳とか入れまして、そのときに覚えてます。米を食べるとバカになる。かういふデマが飛んでましたよ。私たちがまだ中学生のころ。アメリカの謀略ですよね。彼らは謀略性に富んでます。
 アメリカは戦争に勝ったけど、日本が再び立ち上がるのが怖いもんですから、中国や韓国と仲違ひするやうな種をまいて逃げてゐるみたいね。竹島の李承晩ラインなんて。これはもうずる賢いです。

10日

 しかし本当に日本といふのは専制国家ではありませんし、人類がかつて考へ出したことのない、最も厳しく厳密な名誉の掟が国民の間に支配的に影響力を持つといふ矜持ある国家だったんですけどね。アメリカなんかは私、盛んに軽蔑してますけど。この間も新聞に書きました、アメリカの一%のエリートが三十六%の金融資産を持つといふ、もう差別そのものの国なんですよね。案外それが見えてないんですね。だから市場経済でいきますと日本は大変なことになりますね。

11日

佐々木高行といふ方が明治の元勲なんですけど、こんなことを書いてゐるんです。「日本は開闢より、今まで数千年になりたることにして、既に人々も礼儀を知り文明国と言ふべし。ただ、日本にできるものとすれば百行技術法律なり。いかがとなれば、欧米各国に遅れたることは右の事件のみ。技術と法律だけ。教法は決して他の宗旨を採用せずともよかるべし。日本古来の法にて足れり」。要するに日本は技術と近代的法律が遅れてゐるだけで、国民の礼儀も宗教も他国から学ぶ必要はない。既に二千年の成熟した文明だと。かう言ってゐるんですよ、三百年鎖国した直後でも、少しも日本のアイデンティティが揺らいでないですよね。

12日

 それが今、めちゃくちゃになってますね。誇りを捨ててしまってをる。明治の欧米文物を学ぶために二年半、欧米各国に(大変学識の深い長尾参事さんなんかを前にこんなお話をするの、申しわけないですけどね。私、長尾参事さんのあの博学な知識なんて、ぜひ神道の全国の方でお話してほしいと、日ごろ尊敬してをるもので、こんなこと申し上げるのです。)日本人が欧米に行ったときに、丁髷で堂々としており、ヨーロッパ人は、日本は未開で裸で暮らしてをると思ってゐたのに日本には政府も法律もすぐれた文化があり、芸術国であったと認識して、尊敬心を抱いてゐるんですね。こんな国家だったのに、やられちゃった。本当に御先祖さんに申しわけないなと思ふわけです。
 そして、二番目は戦争に負けてアメリカの物量思想が入ってきて、我々の年代以上の者がをらなくなると、戦前の日本の核としたものがなくなってくる。本当に伝統の断絶が起きてゐる。この伝統の断絶を復元しなきゃいけないといふのが私の今回のねらひであります。

13日

 私のホームページをちょっと急いでお話します。見た人が、よく来るんです。去年の十二月ですかね。山梨県の甲府市から電話かかってきましたよ。五十代の主婦です。「日本のことがわかりませんでした。何も教へてもらえませんでした。徳永さんのホームページをもっと早く知らなかったのが悔やまれます。」
 信州からは、「ますます冴えたホームページ、わかりやすい言葉で内容は的確で、テレビのつまらないコメントなんて聞きたくありません。イラクの件、菅直人の件、胸がすっきりします。徳永先生、頑張ってどんどん発信してください。」

14日  北海道の旭川市の人。これは全部読ませてください。これは、「公爵」、さっきの「佐々木高行についてインターネットで調べてゐたところ、平成十五年三月五日の日本海新聞の潮流コラムで、徳永先生のお考へに触れ感動しました。私、思ふに、昨今の日本社会がいよいよ危機的な状況下になりつつあります。日本の伝統的な美しい精神を知る長老世代が世を離れつつあり、その精神の継承者は余りに少ない。その一方で、まがまがしいものが一層ふえてきてゐる。それでは日本の社会も家族も子供も守れない。古来日本人の魂に流れる清浄なる泉、それが枯れつつある。日本人は日本人の心を失ひつつある。実に危機的です。私自身は沈黙し、世間の義理で多くの正反対なことにさへ同調しながら自分を隠し続けてきました。しかし、もうそれではいけないのではないかと考へてをります。今の日本は狡猾な反日本的思想勢力の台頭によっていよいよ危機的な状況にあります。私たちは美しい日本精神を正しく守り抜き、かつ発展への道筋を確かなものにしなければなりません。今こそ厳しい覚悟のもと、力強く活動を展開すべきときだと心得ます。決して遅れを取るわけにはいかない。歴史的に重要な時局にあるものと考へます。私は北海道なので地理的な制約がありますが、先生に学びつつ先生の御活動、御発展、心から祈ります。平成十六年九月十八日」
15日

これに尽きると私は思ひます。日本人は気がついてきてをるんですよね。ところが日本は農耕民族といふのは、こんなこと言っては悪いんですけど、日和見なんですね。もう、みんなが、シンギュラーポイントってありますね。水、湯を沸かしますと、もう沸騰寸前まで何にも動かない。沸騰直前になると、ブオーッとなるんですよ。あのポイントがシンギュラーポイント。日本人は七〜八割、六割から七割、ブワーッと行きだすと、みんながダーッと賛成するんです。内心は「あんなことやっとってはいけない」と思ひながら口に出さない。これは農民的ずるさです。と言ったら悪いですけどね。

16日

これが国際社会で外国人がこんなにたくさん入ってきたら、そんなのはもうだめですわ。今の日本が全てその通り。だから、国際的社会の中では言挙げしなきゃいけないんです。これは安岡正篤先生といふ、御存じでせうか。私はあの方と住友銀行にゐましたときに宴席に同席し色紙いただいたり、ホームページにも書いたりしてをりますがあの先生もおっしゃってゐるんですよ。日本は最終的には、思想信仰は究極には神道に帰すると信じてゐると。ただ、神道家の用語が、現代人に甚だしく合はないのは、神道の阻害されやすい一原因と思ふと、これ私の言葉でなく、偉大なる安岡先生、昭和の碩学。それは確かに神道家が反省し解決せねばならない重要な課題であると、これは安岡先生がかう言ってゐるんですね。

17日

それで私、今日は二時ごろ目が覚めまして、ある提案がひらめきました。最後に御紹介しようと思ってね。
 アメリカなんか拳銃を各人に、家庭に許すほど野蛮ですよ。拳銃を各家庭に持たせるなんて野蛮極まりない。日本といふのは皆さん御存じでせう。英国王室は一○六六年。アメリカは一七七六年。会田雄次、京大教授によると、イギリス王室は自分の先祖が海賊出身だといふのを誇らしげに言ふと書いてある。VIPって御存じでせう。ベリーインポータントパーソン。インポート、輸入するですね。海賊といふのはよそから略奪していい物持って帰るからインポート。ベリーインポータントパーソン、VIP、インポート、その英国の王室はそれを誇らしげに言ふと書いてある。
 ここ五百年間の欧米の白人を見ますと、私が言ふんですけど、搾取略奪の歴史で、略奪資本主義だと言ってやるんです。御存じのやうに、「俄か成り金」ほどけばけばしいですよ。私も住友銀行にをって、もう、日本の一番上のクラスから、どぶ板のお家までいろいろつき合ひがあったりしたけど、ナリ金の家に行くほどけばけばしい。玄関にはもう、ちゃちな物がいっぱい置いてある。

18日

ところが本物の金持ちになると、何にもないやうだけど、さりげなく見ると奥村土牛の掛け軸が掛かっている。本物ですよね。白人といふのは金銀宝石指輪で飾りまくる、これナリ金主義です。白人は五百年の成り金です。さう思っとったらいいです。英国は植民地強盗成り金だと私は思ってゐるんですね。大英博物館なんかよその国から略奪してきた物ばかりでせう。さう思はれませんか。あんな物に感心しとったらあきませんよね。
 私は白人といふのはここ二百年から五百年の成り金だと。日本の方がはるかに文化が高いんです。だから明治以降が悪いんです。敗戦以降が悪いんです。バッキンガム宮殿でもベルサイユでも、成り金。しかしその成り金が世界の屋台骨を支へまして一神教原理でやってますからね。

19日

しかし今や彼らの世界を見るとユダヤ、キリスト教を中心に宗教世界は闘争から闘争に明け暮れて、もう疲れ果ててしまってゐるやうに見えますね。これは人間と自然との関係を排除してきたからだと思ふんです。自然と人間。人間と人間の調和、共生を求める日本の古道の神道に回復しなければ人類は救はれないんぢゃないでせうか。
 それに引きかへて日本の皇室。あの皇居の正殿の間。ガラーンとしてます。由緒ある皇室は世界最高の旧家。本物なんですわ。本物だから質素極まりない。神道と同じでして、神道は本当にすがすがしい、簡素、清潔、清楚。
 私も宮内庁の次官に友達がをって、皇居にいったときに車で二重橋の奥の吹上御所を全部見せていただいてね。そのときに三代将軍家光時代から伝はっとる五百年盆栽とか、昭和天皇が勉強してをられた学問所も普通の民家みたいな小さいのがありました。だから、伊勢神宮、皇室と、簡素、質素ですよ。この欧米と日本の相違に誇りと価値観を見いだせない日本人が多くなったのは情けないですねえ。ここをね、ぜひ、強調してほしいですね。日本の価値観。

20日

 私はよくかういふ話をするときに、ゴッドと日本の神様は違ふんだと言ってゐるんです。神様といふと混同しますので、私は日本の神様と一神教の神様とは違ふと、ゴッドと神と違ふ、と言ふのです。各地でいろんな講演があったら私、一生懸命この話をするんです。
 ローマ法王が過去異民族に悪いことしたと謝罪してましたね。三〜四年前でしたか。ああ、二千年に至って初めて謝罪してるわあ、と思ったんですけどね。
 キリストの名のもとに異教徒を殺害してますね。それが彼らの国歌に出てますね。本当にゴッドの本質といふのはちょっとこれは和辻哲郎を読んでゐたら出てましたよ。砂漠における遊牧人間は自然の恵みを待つのでなく、能動的に自然の中に攻め入って、自然からわずかの獲物を取る。これは直ちに他の人間世界への対抗と結びつく。自然との戦ひの反面は人間との戦ひである。この戦闘様式は古代から常に砂漠的人間の特性で、部落の敗北は個人の死につながるといふ発想。
 だから一人一人は極度に力と勇気を発揮せにゃいかん。だからイスラム教なんか見ると一生懸命やってゐるでせう。あれをしないと彼らのグループでは生きていけないんでせうね。感情の異常さを考へる暇のない、ふだんの敵視の緊張、戦闘的態度が不可欠なのが一神教の原理だと、これは和辻先生の有名な「風土」に書いてありました。一神教の本質をすごく喝破してゐると思ふのです。

21日

さういふところから出た国家の支配原理といふのは白人みたいになっちゃうんですね。私は聖書を、若いときによく読みました。実によく読みました。わかるんですけどね。日本は雨に恵まれて湿極って言ひますけれどもね。聖書によって出てくる今のあのパレスチナの辺り、カナンの地って言ふんですけどね。ここはもう、地球の割れ目です。死海なんて海面下四百米。あれはもう本当に地球の裂け目です。もう本当に荒野のカナンの地。「荒野をさまよふ」といふ言葉が出てくるんです。さういふ世界なんですね。
 さういふところから出た宗教を母体としたユダヤ教とかキリスト教といふのは、人類の普遍的原理にふさわしくないと思ってゐるのです。それはユダヤ民族といふのはあそこに閉じ込められて、隣のエジプト、メソポタミア、チグリス・ユーフラテスとかは非常に繁栄しとった。隣で羨望しとったんですね。どん底生活で。
 だから彼らの神は彼らが富を搾取する機会を約束する征服の神であったんですね。だから日本とは違ふのかもしれませんけど、彼らの宗教を見ますと、モーゼの十戒といふのがキリスト教の原点になるのです。殺すなかれ、盗むなかれ、だますな、姦淫するな、バイブルの五章のマタイ伝でも、殺傷するな、盗むな、だますな、姦淫。これ動物的な掟ですよ。
 これ野蛮人向きの掟です。日本なんかそんなこと言はなくても、「忠孝、夫婦愛和し、朋友相信じ、恭倹己を持し、博愛衆に及ぼし。」レベルが違ひますわなあ。かういふところに日本人、目覚めて、本当に自信を持ったらいいと思ふんです。

22日

 資質は日本人の方がはるかに高いと思ふんですね。それで、文明とは何ぞやですけど、皆さん、朝から変な話しますけど、お尻を紙でふく、これほど文明なことないですわね。だって動物ふきませんもん。
 日本人がお尻を紙でふき出したのはいつか御存じでせうか。だれか御存じですか。実は平安時代なんです。一一八○年代からお尻を紙でふき出した。ところがヨーロッパ人、いつごろから紙でお尻をふき出したか、御存じでせうか。これね、五百年遅れてゐるんです。一六二○年代。しかもブルボン王朝といふヨーロッパの一番大きな王室の王様が拭き出したんだから、庶民はもっと遅い。これほどの文明の違ひはないぢゃないですか。お尻を紙でふくのは日本人は白人よりも五百年早かったんです。自信を持ってくださいと言ったら(笑ひ)。
 第一、日本人は和紙がありましたからね。紫式部がああいふ「源氏物語」をつくった。これ、一○○三年ですか。それぢゃあ、ヨーロッパの雁皮紙といふのがありますね。羊の皮です。あの紙は和紙五枚くらゐの厚さなんですよ。だから彼らがつくった紙で拭けないんですよ。日本はもう和紙がありましたからね。その「源氏物語」に相当するやうな小説といったら「カンタベリー物語」ぐらゐですけど、これ、五百年あとだと思ふんですね。日本には今でも五百年前にキリスト教が来て、まだ一%ぐらゐしかクリスチャンがおりませんからね。日本人はわかってゐるんだらうと思ふんです。

23日

あれは教養の書としてはいいと思ひます。第一、日本の神様にはお供え物は野菜とかですけど、一神教の神様は血の滴る姿をお好みですからね。生贄とかいって。もう血の滴るのが大好きな神様ですね。皆さん、言ひにくいでせうから。
 大体キリストの十字架なんか、あれは磔の血の滴る姿を見て、佐々木高行が外国で見て異様な感じがしたって、これ、新鮮な感覚ぢゃないですか、目が皆さん、鈍感になってゐるんです。
 十字架を見て、佐々木高行が明治の初年にヨーロッパに行って、キリスト教のキリストのはりつけを見て、血の滴る姿をもう洞察してゐる。なんと野蛮だと。今の日本人は何かペンダントをしたり、嬉しさうにしとるけど、これ、血の滴る姿やないですか。日本人の感性が麻痺してるんぢゃないですか、と僕は思ふんでね。
 偉さうなことを申しますけど、本当にさう思ふんですね。ところが日本の神様は、御存じのやうに天皇陛下も田植ゑされるし、皇后陛下は養蚕されるし、イラクに行った番匠隊長でしたか。みずから汗流して働くから、イラク人に、歓迎を受けました。新聞は書かんでせう。日本の新聞なんてもう読まんでもいいですよ。産経以外は(笑ひ)。
 白人は将校になると働かないんですよ。日本人は率先して働くからイラクでうまくいってゐるわけね。この文化。これをどうして誇りに持てないか。もっと言へないか。日本人に知らしめないといかんと思ふんですね。国史に誇りがない。国歌ひとつを見ても歌詞が違ふ。本当に異国の神様は血なまぐさいのであります。
 このやうに日本には二千年の縦軸があるのに、座標軸が揺らいでをります。それはみずから勉強してない。怠慢であります。歴史を見ましても、英国は十九世紀、大繁栄した当時の女王がビクトリア女王でしたね。世界歴史学会では日本の明治天皇は国家元首としてビクトリア女王と同格に並んで評価されてゐるのですね。

24日

それから御存じのやうに先ほど申しました伊藤博文。韓国のテロリストに殺されて、それを日本の中学校の教科書に載せてをると。教科書がこんなぶざまな国家なんてないと思ひますよ。それは伊藤博文総理はドイツの鉄血宰相のビスマルクと並び賞されてゐる方なんですよね。それを日本の歴史には書いてませんよ、腹が立って仕方がないですね。
 和魂が失はれてゐるからであります。和魂の復活は国史、国語の復活からではないでせうか。日本の和魂をここらで感じてみたいのでありますけれども、和魂は日本の基本中の基本点だと思ひます。恵まれた美しい日本の自然に逆らはず調和した従順な心。和魂(にぎたま)でございませう。本居宣長が御存じのやうに、「敷島の大和心を人問はば朝日ににおふ山桜花」。本当にさうですね。私も登山家ですけれども、染井吉野より、楚々とした風情の日本の山桜、好きですね。
 源氏物語も大和魂のことが出てゐます。大和魂は敵に勝つといふ荒々しいものでは無かったのですが、徳川時代の終はりに、欧米の侵略の危機が迫ると尊皇攘夷となり次第に武断的国粋思想が加味されてきたと思ふんですね。それは美しい日本を毅然として守り抜くといふ大和魂に進化していったやうに私は思ひます。
 果敢に国や民族のために戦ふ武士道の極致で、本当に憂国、愛国の魂が大和魂だらうと思ふんです。日本民族の至上の精神として高められていった。[にぎたま]もいったん緩急があらば「あらたま」となるのでありませう。

25日

その和魂でありますが、明治に白人がアジアに侵略してきたとき、これを押し返したのは日本人の確固たる精神、即ち和魂があったからだと思ひます。
 それから自分の民族の魂を失はないで、異国文化を上手に取り入れて、巧みに自国化して行くって日本、得意ですね。縦軸が失はれない。この文化の摂取方法も私は、御家芸ですけど、和魂だと思ふんです。敗戦後もさうです。焼け野原から世界第二位の経済大国になりました。和魂洋才であります。日本を日本ならしめた正体の謎、繁栄発展のエネルギーは、この和魂だらうと思ふのです。

26日

 日本には漢字文化が入ったり東洋文化いろいろ入りました。しかし、入りましたけれども、日本にはある学者の先生によると、古代、縄文時代から完結度の高い文明が既にできてをったといふんですね。漢字を借りたことによって誤解されてをりますけれども、縄文時代に和魂が形成されたといふ先生がをられます。
 しかしその穏やかな懐柔的な「にぎたまも」、一旦緩急あれば「あらたま」になるといふのも、古代、防人として普通の家庭の男性が妻子を置いて防人として辺境の地に行って守ってゐた。あれも、あらたま、でございませう。中世以降の武士道精神もあらたまでありませう。

27日 そして一方では自然と一体になる和魂、にぎたま。それは御存じのやうに吉田松陰先生の「身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留め置かまし大和魂」「かくすればかくするものと知りながらやむにやまれぬ大和魂」、これが、やむにやまれぬ、かくすればかくなるものとわかっとるけど、大和魂があって、吉田松陰の処刑前の歌で、「親を思ふ心にまさる親心けふの音信何と聞くらむ」。「平生の学問浅薄にして至誠天地を感格すること出来申さず 非常の変に立ち到り申し候 さぞさぞ御愁傷も遊ばさるべく拝察仕り候」と述べて、この今の歌があるんですね。
28日

そして「身はたとひ武蔵の野辺にくちぬともとどめおかまし大和魂」といって処刑されて、「我、今、国のために死して君親に背かず悠々たるかな、天地のこと」、いい言葉ですなあ。「鑑照、明神にあり」と高らかに朗誦して刑場に行かれ逍遙として死につかれた。本当に大和魂の根幹ですね。偉大なる先祖を我々は持ってをるのに、それが語られない。こんな情けない国家になってをります。

29日

東京裁判でも処刑された松井岩根大将の辞世の句。「天も地も人も恨みず一筋に無為を念じて安らけくゆく」。大和魂に満ちあふれてます。

 東条英機さん。あの方の絞首刑のときの遺書の一部を読んでみます。「裁判も終はり一応の責任を果たし、ほっと一安心し、心安さを覚える。刑は余に関する限り当然のこと。ただ責を一身に負ひ得ず、僚友に多数重罪者を出したること心苦しく思ふ、本裁判上陛下に累を及ぼすことなかりしがせめてものなり」と。

30日

本当に日本の文明は「質の文明」だと言っていいと思ふのです。それで西洋文明は「量の文明」。生存権の拡大、争って相手を制する文明ですね。だからこの辺を本当に我々頑張って伝へていかなきゃいけないと思ふんです。

31日

私、安岡先生の謦咳に接したおかげで、教育勅語の口語訳といふのを、もう数十年前から持ってまして、私が住友銀行の支店長をしてゐるとき、これぐらゐの額に入れて支店長室に飾ってをりました。いろんなお客さんが来ますけれども、希望者には差し上げてました。神社でもされたらいいですね。神道政治連盟にも偉い人がをられますけど、果たして自分の会社でどれだけ自信を持って日本の神道について語ってをられるか。飾り物になってをられませんか。