優雅なる成熟を世界に見せたい 浜 矩子 エコノミスト
我々はなぜここにいるのか。どうしてここに来てしまったのか。どうすれば、ここから逃げ出すことが出来るのか。
我々がここにいるのは、ここがどこだか解っていないからである。
ことのほか、政治家や政策責任者たちが然りだ。
彼らは、ここがどこであるのかを見極めようとしない。
その無神経振りから目を覆いたい。目を覆いたい。
そしてまた、目を覆いたい。その思いが募る日々だ。
彼らは昨日の戦いを戦っている。昨日の夢を追い求めている。
昨日の課題に立向かおうとばかりしている。
成長よ、再び。ハングリー精神よ、再び。追いつけ追い越せよ、再び。
この空回りに右往左往しているうちに、様々な新しい風景が我々の目の当りを過ぎ去って行く。古いアルバムを取り出してノスタルジーに浸ってばかりいるから、目の前に広がる新たな地平が目に入らない。
こんなことをしていると、我々は永遠の暗闇に紛れ込んでしまいそうである。
今の日本は債権大国で成熟国家だ。そして戦後初の新興国だった。そして、グローバル時代を生きている。今まで誰も経験したことのない新天地に、一人足を踏み入れている。
日本の前には誰もいない。日本が振り向けば、誰もが固唾を呑んで、功なり名遂げた「旧新興国」にグローバルジャングルの歩き方のお手本を求めている。
今の日本が置かれた状況は、老衰期にさしかかった時のイギリスに少し似ている。
衰退の一途を辿るかに見えた所で、サッチャー改革のカツが入った。それはそれで成果が上った。
だが、やっぱり年寄りの冷や水だった観がある。
無理な若返りをごり押しした後遺症で、彼らは今、わが身の何たるかの再発見に四苦八苦している。
優雅なる成熟をどう演じてみせるか。
それが今の日本に問われている。
グローバル・ジャングルを、ゆとりで歩きぬく姿を世界に見せたい。