7月2日 経済一思考 その二

 けれども、それがひとたび自己の問題となれば、単

 にそれだけでは済まされないはずです。大衆を内容とするとき王道も民の衣食を足らしむことを第一着手としています。東洋でもこの点では決して経済生活を無視するものではありません。ただ後の場合、自己も大衆の陰にまんまと自己を紛れ込ましてまず十分腹を肥やさねば道徳も宗教もあったものかというのでは、未来永遠人間世界に光明は射さないでしょう。東洋ではここを特に愁うるのです。今の人はこの問題を甚だしく錯ってはいないでしょうか。つまり孟子も言うように単なる生を好むか、好むところより生より甚だしいものがあるか、この別が現代人にはっきりと自覚できないのです。否、一般がうつらうつらと単なる生に彷徨しているのです。そして制度には恐ろしく目が光ってきたが心眼がすっかり潰れてしまった。         東洋の心