鎮守の森のキビタキの雛

六月三日夕方、おおち谷大宮池のベンチで小鳥の囀りを聞いていた。ここは涼しく、
野鳥の森として名高い場所である。Y氏から電話あり神社庁前で二羽のキビタキが珍しく大騒ぎしてると。
キビタキは高木の梢で鳴くが谷川で二羽が騒ぐのはおかしい、蛇に狙われている!私は急いで大宮池を去る。
庁舎前で低い枝にとまるキビタキの美しい黄色を観察、橋の穴に蛇は引っ込んだがキビタキは低いブッシュ
で騒ぐ、蛇が巣を狙っているかも?鎮守の森をこよなく愛するY氏は神様の鳥だと呟く。
ふと、せせらぎを見ると枯葉が流れる如くキビタキの雛が黄色いクチバシをバクバク開けて流されている
ではないか!鳥類専門家のY氏は素速く手で救い上げて軒下に枯葉を敷き雛を置き親鳥の早い到来を待つ、
早く早くの祈りも空しく、臆病な鳥はやっとの事で雛に近づく、我々はほっとした。二匹のキビタキが
雛に近づく、我々は離れた神社門の傍に隠れて見守る、生きて欲しい!早い助けをと祈り続ける。

Y氏、こんなことは実に珍しい!同じ命を持つものとして雛の命の首尾をひたすら祈り続ける!
雛に近づいた親鳥はやがて空高く舞い上がり高木の梢でひと際高く鳴いた。翌早朝、雛はいなかった。
親子共空高く飛んでいると信じたい!某氏とは鳥蝶類・生態系専門家、探鳥を兼ねた鎮守の森の会を
発足された吉田勇氏である。氏の自然を愛する認識と行動を高く評価する。このような方が鎮守の森を
見守って下さることは有難いことだ。   徳永圀典