世界に衝撃拡大…ローマ法王「最後の審判の日が到来」

地球温暖化に警鐘を鳴らす発言が共感を呼び、世界に波紋を広げている=17日(ロイター)

 「『最後の審判』の日が到来するという預言をもはや軽視することはできなくなった」

 ローマ法王フランシスコ(78)が18日に発表した地球温暖化の進行に警鐘を鳴らす“教え”が、世界に波紋を広げている。本来はカトリック教徒に向けて説く教えの中で環境問題に触れるのは異例といい、「この惑星に住むすべての人」に対し、生活スタイルを変える「文化革命」を求めた。12月にパリで開かれる国連気候変動枠組み条約の第21回締約国会議(COP21)を念頭に置き、温暖化対策に消極的な米国の保守派を批判するなど政治問題にも踏み込み、国際社会に早急な対応を迫った。

「地球、ごみの山のよう」

 「私たちの故郷である地球はますます巨大なごみの山のような様相を呈し始めている」

 率直な法王の言葉に世界の多くの人々が衝撃を受けた。米CNNテレビ(電子版)など欧米メディアによると、法王はカトリック教徒に向けて教えを説く「回勅(かいちょく)」と呼ばれる公文書を発表した。184ページに及ぶ文書は(1)汚れた大気(2)汚染水(3)工業煤煙(4)海面上昇と異常気象−など全6章で構成。法王庁が科学など幅広い文献を参考に1年がかりでまとめた。

この中で法王は「地球温暖化は人類がつくり出した問題だ」と明確に指摘。化石燃料に加え、インターネットとデジタル機器や大量生産・大量消費に依存した発展モデルが問題を悪化させていると批判した。

 その上で、「この傾向が続けば、人類は前代未聞の生態系の破壊に直面するかもしれない」と懸念し、人類の自己破壊を防ぐには生活スタイルを変える「大胆な文化革命」が必要だと訴えた。

国際会議を厳しく批判

 さらにCOPなど気候変動をめぐる最近の国際会議について「政治的な意志が欠如し、効果的な合意に達することができなかった」と厳しく批判。「化石燃料に代わる再生可能エネルギーの開発などによって、今後数年間のうちに二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを大幅に削減する施策づくりが急務である」と、年末のCOP21での削減目標の合意を強く求めた。

 さらに温暖化の影響は農業や漁業を生活の糧とする最貧国に最も深刻な被害をもたらしていると強調し、先進国の責任は「より大きい」と訴えた。さらに「強い政治、経済力を持つ人々が、この問題を覆い隠すか、悪影響を軽微なものにしようとしている」とし、温暖化に消極的な米国の保守派を念頭に激しく批判した。

オバマ氏・国連総長は歓迎

 米国保守派の反対に直面している民主党のバラク・オバマ大統領(53)は18日、「われわれには、気候変動による悪影響から未来の子供たちを守るという極めて大きな責任がある」との声明を出し法王のメッセージを歓迎。国連の潘基文事務総長(71)も「すべての宗教指導者による気候変動問題への貢献を歓迎する」と声明で述べた。

 世界自然保護基金(WWF)などの環境保護団体も「法王のメッセージは12億人のカトリック教徒を超えて世界に響きつつある」と喜んだ。

 法王という立場で、これほど直接的に環境問題や政治問題に言及した例はなく、まさに異例ずくめ。新約聖書に書かれた、世界の終わりにイエス・キリストが再臨し、裁きを行う「最後の審判」まで引いた法王の言葉が世界を大きく動かすかもしれない。