安岡正篤先生の言葉  鳥取木鶏会 7月例会 

人間の本質は徳性

 能力のうち最も大切なものは知能でありますが、徳性に比べるとこれは枝葉のものであり、人間の脳細胞は体の外の部分と違いまして、生まれた時既に一生に必要な全量を具備しております。この脳髄は三才にして既に大人の八割発達致します。理解力、判断力、推理力、記憶力、想像力、注意力等早くから発達いたしまして、修練しないと案外早く停頓します。それから人生は習慣の織物とも称されております。躾というもの意義はこの良い習慣を養うことであります。徳性と知能、そして良い習慣を磨き本当の自己を確立すれば天命を知るようになります。            朝の論語

 明朗、清潔、正直、同情、勇気、義侠、反省、忍耐

 と言うような徳性、これが人間の本質である。徳永

感動から始まる

 感動が人間に一番尊いことである。無感動な人間ほどつまらぬものはない。よく世間で、あいつは熱がないとか、いっこうに張り合いがないと言うが、電気が伝わらないような人間は実際つまらない。よくある無内容な人間になると、せっかくいい話をしてやってもキョトンとしている。話が通じない。これくらい情けないことはない。

人間の進歩というものは、そういうインスピレーション、感動から始まる。偉大な発明発見でも、あるいは悟りでもそうです。みんな感動がないといけない。          知命と立命

幸が危い

 人間というものは逆境よりも順境、禍よりも幸に弱いものであります。持たざるよりも持った方が、病弱よりも健康のほうか゜むしろ注意しなければならない。人間は得意・成功の方が失意・不遇よりは危い。素朴よりも文明の方が危い。これは人間の通則であり、また人間の微妙なところであります。    活学第三編 

敏に志す

 自分を作って行く上に皆さんが密かに心がけになってるべきことは、絶えず「敏」に志して、心を働かせて、しかも謙虚に、できるだけ人に学べということです。もっとやさしく言えば有益な交わりですね。つきあい、交わりというものを、できるだけ広く持つということであります。また換言すれば、皆さんが早く職業化、専門化しなということです。職業人、専門家に早くなりきらないということです。決まりきった生活をして、決まりきった一日を送っていると豊かな人生や社会のわからない機械的な人間になってしまう。      暁鐘