メガバンクの儲けすぎ論はあたらない
日本のメガバンクの公的資金返済に拍車がかかっている。年度内に完済される見込みである。そして政府は巨額のキャピタルゲインを得る。
今日の経済環境は予測範囲であり、三和銀行などは破綻させなくて良かったのである。宮沢大蔵大臣以後の政治による銀行の象徴的スケープゴートの端的な具体例である。三菱に救済されなくて良かった筈である。過去、行儀の悪い三和銀行がバブルの象徴として、大蔵省に強烈な仕返しをされたに過ぎまい。
メガバンクの不良債権は、日本企業全体の不良債権のシャドウである。不良債権は、銀行だけの原因で発生したものではないのだ。むしろ金融政策の被害者である。
あのバブル崩壊による、不良債権は、明治以来、営々として蓄積した日本の銀行の自己内部留保約100兆円を提供することにより解決したと思っている私は、一に政府の統治能力の欠如の生贄になったのが日本の銀行だと確信している。一方的に銀行だけの原因では絶対にないのである。
さて、今回、メガバンクの儲け過ぎ論がまた起きている。果たしてそうであろうか。
メディアの指摘は、情緒的であるだけで儲け過ぎの論拠が示されていない。
ここが実に、日本的というのか、国民に媚びたようなものなのである。
他国の世界的メガバンクの破格の収益と収益の内容を分析して指摘しているのかと言えばそうでないことは一目瞭然である。
1. 公的資金を受け入れながらの論拠は子供だましの主張である。銀行の収益に占める公的資金の寄与率が示されていない。
2. 銀行の不良債権を償却できるだけの収益基盤が得られない金融政策だから、長引いて公的資金の注入を得ていたのである。銀行が倒産して困るのは国家・国民なのである。
3. 米国のメガバンクと一桁も違う利益と比較検討していないメディアである。ナイーブな情緒性はとてもメディアとしてお粗末なのである。
4. それで不当な利益であると示したい金融当局は、三井住友銀行とか保健会社を盛んに槍玉にあげているのは、金融当局の陰険な目くらましであろう。政治のスケープゴートに便利な存在がメガバンクなのである。自由に叩けるからである。
5. 日本の銀行はアメリカ初め外国と比べると比較にならない情緒的なサービスをしている。シティバンクやスイスバンクユニオン、新生銀行のあのアクドサを想起するがいい。論拠を持たぬから外資を叩けないメディアなのである。日本の銀行だけ叩くのは、メディアの国民への媚びである。理屈に合わない。
6. アメリカでもスイスの銀行でも、証券でも法律違反スレスレをどんどんやり儲けている。日本のメガバンクは法令違反を探しても難しい程、遵法的である。
7. 顧客への手数料の無料化とかメディアは簡単に言うが社会主義国ではないのである。それを言えばメディアこそ、公共の電波でナンセンスな報道を垂れ流して途轍もない高給を得ているのである。
平成18年7月1日
徳永日本学研究所 代表 徳永圀典