国家の本質

国家は民族自然の肇造(ちょうぞう)であります。

決して単なる構成社会ではなく、根深い本然(ほんねん)社会です。 

そういう自然的性質(血縁・協同生活関係・全体意識・共通文化等)の久しく強いものほど勝れ

た国家で、
 国家と社会とを強いて区別して、人民の自然的組織を社会とし、

特に権力服従関係を本質として国家を定義しし、国家を人民生活から乖離して考させ、

引いて敵視させるような理論は無知な民衆を煽動するには魅力があるが、

人間生活の歴史に即した真理から言えば、寧ろ非科学的な戯論です。
 

支配とか権力とかいうものも実は人間が集団生活を発展してゆくうちに自ら生じた

即ち自然的事実に基づくものであって、人間が勝手に作為して成り立つものではなく、

例え、一時成り立っても忽ち破れることは歴史がいつも証明しています。
 

       安岡正篤先生の言葉