日本人 

幕末、欧米の視察旅行をした徳川幕府一行に乗船したアメリカの軍艦・ポータハン号の乗組員ジョンストン中尉がいる。アメリカ西海岸に上陸してニューヨーク等に廻るのであるがジョンストンは通訳として岩倉使節団に終始随行していた。 

ニューヨークで大歓迎を受けた使節団一行であるが、ジョンストン中尉の日本人観察の纏めがある。 

ジョンストンは書いていた、

「日本人の行動を見ていると、申し分のない正しい礼節の要素を備え、傲慢、出しゃばり、尊大などの態度は絶無だ。

社交場に於いては、時として苦痛を感じたり、或いは胸の中でイライラする事も沢山あったに違いない。

が、日本人には強い忍耐力がある。胸の中に深くこれを隠して、絶対にそういう感情を顔色に現すことはしない。

彼らはいつも機嫌よく、内から発する心の光が柔和で、温かな顔に輝いて、文明をもって誇る西洋の知識階級に見られるような表面的な憂い、疲れ、不平などの表情とは全く正反対な様子を見せている。

これは、知的優位に立って、精神的文化を持っていると思い込んでいる我々が、この平和な内心の満足の秘密を、非キリスト教徒的国民から学ばざるを得ない。

彼らには、外から彼らを拘束する法則はない。自ら自分を拘束する法則があるだけだ。

彼らは常に、人と接する時に、明るい態度をもってし、また規律を守ることは厳にして私事や楽しみ事と、国家が命じた政治上の公事との間に厳然たる区別を立てている。絶対にそれを犯すことはない。」 

幕末にアメリカに渡った日本人はいかに良風美俗と、厳しい精神を持っていたかが理解できる。

 

そして心あるアメリカ人の心を打ち、多くの人を感動させたのである。 

言葉の通じない外国人を感動させるのは、何と言っても「誇りを持った堂々たる誠実さ」なのである。 

アメリカ人は「日本人使節団は、日本国を守ろうとする愛国心に燃えている」と受け止め、その熱意がアメリカ人の心を強く動かした。 

「使節団は、日本人としての誇りを強く持っている」と印象づけ、多くのアメリカ人を感動させたのである。 

平成19年8月 

徳永日本学研究所 代表 徳永圀典