憲法改正の必要性理由
2013.8.16 櫻井よしこ氏
□櫻井よしこ氏基調講演
まず、何ゆえにわが国が憲法を改正しなければならないのかについて所感を述べたいと思います。米オバマ政権のアジア太平洋政策は微妙に変わろうとしています。加えて中国は軍事力を増強し、世界中に力を及ぼしていく政策を掲げ、実行しています。
その中で、アジアをはじめ世界の国々はまずもって自らの自主独立を自力で担保せねばなりません。加えて民主主義、人権、自由、法の支配といった価値観を共有する国々との協力態勢が必要であることは言うまでもありません。そこで日本が果たす役割は非常に大きいのです。アジアの国々に足を運んで意見を交わしてみると、日本への期待が非常に大きいことを痛感させられます。
私たちの国は日本のためのみならず、アジア太平洋の平和と秩序のためにも応分の貢献をしなければなりません。戦後70年近く、私たちは経済以外に誇れることをしてきたでしょうか。ODA(政府開発援助)で他国を助けることはできました。けれど人間の自由、諸国の民主主義、国際社会の全き法治について、意義のある、記憶に残る貢献をしてきたでしょうか。疑問です。
だからこそ私たち日本人は、自分たちがどういう民族であるのか、ご先祖様はどんな価値観を大事にして残してくれたのか、といったことにもう一度、心を致さねばなりません。またわが国の憲法、そこから生まれる法律や制度などが、日本人本来の良さというものをどれだけ反映しているのか、或いは、いないのかを考えなければなりません。このままでは世界に対して日本がいい意味で貢献するのは難しく、今こそ私たちは日本の本来の価値観を憲法と法体系に反映させていかなければならないと感じています。そのためにも国の根幹である憲法改正を急がなければなりません。
「国民の憲法」は、絶賛されてよい憲法草案だと思います。第1に、前文で日本の国柄をこの上なく明確にしてくれました。もうひとつ、「権利は義務を伴う」として、現行憲法に欠けている他者への思い・公への思いを十分に補ってくれています。
この「国民の憲法」を日本の新しい憲法とするとき、わが国はここからよみがえると確信いたします。改憲の好機を逃すことなく議論を重ねて、皆の力で憲法を変えていきたいものです。