組織の体質洞察の力を

組織というものは改革せずば次第に弊害が生じ、やがて自爆する。改革を繰り返しても耐用期限がある、組織とはそういうものである。

幕末、欧米の軍艦とか商船がしばしば日本沿岸に出没し始めたのが安政の初期である。時勢を論じていた山田方谷は、幕府体制に話題が及ぶと、次のように断言して驚かせたといわれる。

方谷は、幕府を衣服に譬えて言う、

幕府を樹立したのは徳川家康、衣服の素材を用意したのである。二代目の秀忠は、裁縫して衣服を作った。

出来上がった衣服を着たのが三代目の家光である。

これ以降、代々の将軍がその衣服を用いた為に、八代目になり吉宗が始めて洗濯をした。享保の改革だ。それ以降も古着になった衣服を着ていたが、もう一度洗濯したのが松平定信で、これが寛政の改革である。

だが、それ以降は、汚さと、ほころびが激しく新調しなければ用いることが出来ない。

これを聞いた者が、「それでは、三度目の洗濯をすればよいのでは」と言うと、「布質すでに破れ、針線にも堪えられない」。つまり既に長く使用した上に、洗濯を繰り返したので、もはや材質がボロボロで縫うことさえもできない。と幕府の命脈が無いと言ったために聞く者をして色を無くしたという。

虚飾的な現実に惑わされず、現実を見つめ、真の改革をしなければならない。方谷は率先して、藩財政の改革を成し遂げたばかりか、旅人が一歩、松山藩に入ると、その藩政と良俗が分かったという。