聡明なる明治人 

言うなれば、比較文明の実地大研修により、久米邦武を初め一行の面々は、地球上のあるゆることが総ては相対的であり、各地域に住む人々が時間的、空間的な制約の中に生きており、歴史的、風土的なある条件の中で生活しているのだと言うことを強く認識したのだ。 

そして彼ら明治使節団の持つ、和漢洋の教養による、三点測量ともいうべき観察と分析により初めて、世界に於ける日本の置かれている場所が見えたのである。 

聡明なる明治人

久米は言う

(もと)より人為(じんい)の法に、完全なるものあるべからず、人民に伸べば、政府に縮む、自由に切なれば、法度(はっと)に漫なる、一得一失(いっとくいっしつ)、理の自然なり」 

欧米諸国の「共和と自由」についても、その利点を認めながらも同時にその欠点をも洞察していたのである。 

徳永日本学研究所 代表 徳永圀典