日本の独立自衛

     悪の力に対する根本的覚悟

講和条約の締結、主権と独立自由の回復につれて、安全保障・再軍備問題に関する論議が紛糾しております。

こういう問題は、根本を忘れて、枝葉末節に亘れば亘るほど解決はつくものではありません。

我々は先ず人間として暴力に対する根本的態度を決定しておかなくてはならない。

これに五種を挙げることができます。

対暴力への態度 

第一は、自然界に行われている弱肉強食の現象で、この場合、弱者は唯泣き寝入り、敗北か敗死があるばかりであります。

第二に、一寸の虫にも五分の魂という諺がある。まして人間である。悪の力がいかに強大であっても、その言いなり次第になって泣き寝入り、或は敗死する羊や兎のようで済むものではない。それは良心と気概が許さない。これに基づいて、即ち本能的に、暴力には暴力を以て返報しようとするもの。これは世間に最もありふれた復讐的態度です。然し、この野生的精神行動は人間にいつまでも平和と向上とを齎すものではありません。

第三、然るに、ここに弱者があって、暴力に返報するだけの勇気も暴力も持たず、さりとて泣き寝入りするに忍びず。

もっともらしい理屈を見つけて、自己の惰弱卑屈を飾り、自己の良心を偽り人前の体裁を作ろうとする。欺瞞的態度とでもいいましょうか。
           安岡正篤先生の言葉