人生は情理 

近来もまた理論を尊びますけれども、実は人生は理論では動かぬのであって、より多く、根強く感情で動くものであります。 

従って、理論が人を動かすのも実は単なる形式論理で動くのではなく、感情の籠った理論―「情理」であって始めて人を動かすことが出来る。 

そこで、人間の教養あるいは民族の発展という上において、情操(じょうそう)陶冶(とうや)ということが大切な問題であります。

情操という問題になって来ますと、近代人は、世紀末文明の一つの特徴で、非常に感傷的です。パッショネートです。エキセントリックと申しますか、いわゆる激情的、煽情(せんじょう)的、ヒステリックです。 

堅忍持久(けんにんじきゅう)ということが事を成すに必要なものですが、堅忍持久というものは感傷的な心理ではどうしても実行出来ない。 

日本人が非常に感傷的になって、つまり気分本意で生きている。感情の陶冶がないから、自然脆弱(ぜいじゃく)になったわけであります。  

安岡正篤先生の言葉