老子に就いて       徳永圀典    

上下二篇、別名「道徳経」。上篇を「道経」、下篇を「徳経」に分けたものもある。

老子は実在したかどうか、現在でも疑われているが、史記によると、楚は()(けん)の人。姓は李、名は()、字は?(たん)周の守蔵吏(図書官吏)。孔子は老子を訪ねて教えを受けた。周の衰退を見て隠遁する際、役人の要請を受けて言説5千文の書を遺して去る。それが、今日の「老子」の書。だが、「知る者は言わず、言う者は然らず」と言う老子が果して書いたのか疑問の説あり。

老子の言葉は、世間一般に親しまれ「虚無自然」を尊び、「柔弱(にゅうじゃく)(けん)()」を守る思想は、「道教」の源となり、儒教思想と並び中国思想を支配してきた。東洋思想を探る上には「老子」は必読の書と言われる。

参考 

道教 漢民族の土着的な伝統的宗教。

中国三大宗教を三教と言い、儒教、仏教、道教の事である。

中心概念の(タオ)とは宇宙人生の根源的な不滅の真理を指す。道の字は?(しんにょう)が終わりを、首が始まりを示し、道の字自体が太極にもある二元論的要素を表す。この道(タオ)と一体となる修行のために錬丹術を用い不老不死の霊薬、を錬り、仙人となることを究極の理想とする。神仙となって長命を得ることは道を得る機会が増えることであり、奨励される。真理としての宇宙観には多様性があり、中国では儒・仏・道の三教が各々補完し合って共存しているとするのが道教の思想である。食生活においても何かを食することを禁ずる律はなく、さまざまな食物を得ることで均衡が取れ、長生きするとされる。現在でも台湾東南アジア華僑華人の間ではかなり根強く信仰されている宗教である。中華人民共和国では文化大革命によって道教は壊滅的な打撃を受けたが、民衆の間では未だにその慣習が息づいている。

空海は三教指帰(さんごうしいき)によ仏教が一番としている。

 

理趣経