97日 生きていることの不思議 その一

 いかにも、これくらい変わったことはない。それで初めて面白い。みな変わったことをと思ってうろうろ探しているが、本人自身が、こうして生きていることくらい変わっていることはない。考えてみると、無限の時間、無限の空間、その中にあって、たまたま、ここにこうして坐っていることは非常に珍しいことだ。これ程珍しいことはない。一河の流れを汲み、一樹の陰に宿るも、皆これ他生の縁、前の世からの因縁である。人間は探して歩いてもなかなか会えない。