破滅は当然の日本の現状 

今日のように刺々しい利己的本能丸出しにして、虫の好い理屈と闘争ばかりに耽っていて一体どうなるか、こんなことがわからぬ程、病的心理になっているこの近代の理知主義、抽象的な、ことに理論万能の行き方は強く反省されねばなりません。 

利己的、物質的日本人 

これを要するに近代日本人の一般の弱点は甚だしく利己的である。甚だしく物質的である。

人間が小さい、滅私奉公、義勇奉公、人生や国家の大事に対する感激性や身を挺す道義に乏しい。 

非常に気分本意であり理屈っぽく抽象的であって、どうも人間の情操(じょうそう)の練磨、叡智の涵養が乏しい。大学だの専門教育だというものが盛んになりながら、卑近な人間の常識や礼儀には甚だ(うと)い。これが案外、国際的反感、憎悪の原因になっている。 

破滅は当然の日本の現状

これから真に日本が独立自衛に乗り出して、この難局を打開し、国家百年の運命を(ひら)き、この難局を有利に導いて行こうというのには、結局急がば回れでありまして、日本人の教育というものに一大革新を加えねばならぬ。

従来のような思想、従来のような教養では、到底日本は世界に躍進することは出来ない。こういうことが、心ある人々の頭痛の種になっているのでありまして、勿論、この教養の改革ということは政治、経済、百般の変革に伴って自ら行わるべきことでありまして、切り放しては出来ないことであります。 

ただし、あるゆる政治、経済、その他国政百般の革新の根底に人物と教養の問題がある。これを無視してしまえば日本は破滅するのも当然であります。 

   安岡正篤先生の言葉