96日 腹のある人間

 今日の人間は、なんぞと言えば頭が善いとか、悪いとか、頭で人間を評価する。もう我々り先祖が言うたように「腹」ということを余り言わぬ。

頭とは何であるか。それは浮世三分五厘的生き方に過ぎない。世の中を深刻にわたること、人間を真実ならしめること、人生を尊くすることなどに役立つ力ではない。そこに「腹」の尊さがある。

腹とは世の中を深く洞察し、人生にどっしり落ち着いて、自己、他人、世間、国家、すべてを真に血あり涙ある尊いものにしてゆく力である。これからの世は、殊に頭の人間では救われない。今までの教育で腹のある人間が出来ようはずはないではないか。

           天地有情