新しい神道の予感 徳永圀典
森の中で祈ることを日本人以外は考えつかなかった。人類の文明とか歴史を回顧すると森のある所、必ず文明は興り、森を食い潰した時、その文明は必ず滅んでいる。人間にとって森は生命の泉であり神と言える。
日本は縄文の太古より21世紀の現在まで国土は深い緑に覆われて、いよいよ栄えている。それは日本民族が古代から自覚の有無に拘らず神道が血となり肉となって森との共生・共存の思想で生きてきたからである。日本の原理は神道の原理であり、それは正しく「森の原理」と言える。
古代ギリシャの象徴であるパルテノン神殿は今や瓦礫の廃墟にしか私には見えない。それに比して日本の神様は鬱蒼たる森の中に佇んで恰も生きておられるように思える。全国各地二千ヶ所あるという鎮守の森に日本の神様は静かに鎮座まします。緑の森林に覆われたお社は正に生ける神殿であろう。
これに対して西洋の原理は物質主義に根ざし、大量生産・大量消費の思想を生み自然破壊を招いた。西洋文明は原理的に自然征服・破壊の欲求から生まれた荒々しい文明で、現在の地球環境破壊の思想的元凶である。現在の地球環境破壊は五百年にわたる白人支配の西洋原理が破綻しつつある事を示す。西欧帝国主義、共産主義は清算された。矛盾だらけの新資本主義もリーマンショック以後、ギリシャ危機、ユーロ危機、ドル危機と清算が続いている。台頭した中国の欧米原理に基づく繁栄も近未来の破綻は必然と観る。
このような世界の風潮の中、大自然の偉大な働きを観て「我々の身体は地球からの借り物」だとした我が祖先の思いは科学的に正しく人類歴史の方向性に合致している。身体の凡ての元素は地球からの借り物で、一定期間地球に存在したら総てを地球や宇宙に返還する。その偉大な働きを日本人は八百万の神々と捉えたのかもしれない。
なにごとのおはしますかは知らねども
かたじけなさに涙こぼるる
おはします気配のある崇高な「なにごと」は疑う余地もなく神さまのことだと日本人なら子供の時から分かっている。この歌から溢れ出る、純粋さ、優しさ、人間を超えたものに対する日本人の心を素直に表現している。それは大自然への畏敬の心である。
私の好きな言葉「忝い」。天地自然、万物に神々は宿るという日本人の素朴で大らかな宗教心、自分が生きていることを「かたじけない」と感ずる謙虚な心情、これこそ我々の遠つ御祖先から連綿と抱き続けてきた民族の心ではないか。自分が生かされていることの感謝、平穏な生活の感謝、この時、ふとこの歌を口ずさむ、洵に忝く有難い日本である。
その、「生命の元親」である大自然や地球に感謝し、自然と共に生きるという日本的存念が世界人類に益々必要になっている。その存念の根幹にあるのが神道である。
このような視点から帰納して行くと、日本の神様は正に地球神である。この日本の神様の原理こそ21世紀の地球・人類の幸せを守る普遍的原理であると世界を啓蒙し周知せしめたいと切に願う。自然と環境に優しい神道こそ、世界を救う地球宗教だと我々は自信を持たねばならぬ。
世界的歴史学者・人類の大英知アーノルド・トインビーが伊勢神宮に参拝して「この聖地に於いて私はすべての宗教の根底的統一性を感得する」と感動し毛筆で署名した。神道こそ地球人類の危機を救うとトインビーが予言した事に日本人は矜持を持つべきだ。
「宣言」
神道は
@人間に幸せをもたらす森羅万象の偉大なるものを神として崇める。 (自然崇拝)
A 人間の幸せを築いた古代の偉大な人物も神として崇拝する祖先崇拝の思想で貫かれている。 (先祖崇拝)
B 森と水は人間や万物の命を育てる元として、こよなき感謝の対象。 (森林は万物の命の水と酸素を育成)。
C太陽は全生命の根源、その化身の天照大神は自ら働き機織された。歴代天皇自ら田植えをされ、皇后も養蚕される伝統が続いている。働くこと、手を使うことは人間の美徳。
(日本の労働は欣労)。
D神様は森の中のお社に鎮座し、簡素・質素を旨として地域や住民を護り見守る。 (大地・住民保護)
E水は生命の根源であると共に清浄・清潔をもたらす。「ハラエタマエ・キヨメタマエ」はその祈りの言葉。
(清潔・清浄は健康の基本)。
F人間は死ねば、誰でも神となり「命または尊」と呼ばれる。 (人間の平等性)。
G神道は簡素を旨とし、平安・豊穣を祈り、人間に素朴な健康生活をもたらす。 (資源尊重)。
H和魂は穏やかな心で人間に自然の恵みを教え平和に導く。(平和共存の原理)
I日本の神様は大自然の心にかなう地球・人類生存の根幹原理そのものである。 (人間は宇宙の一部)。