日本海新聞 潮流コラム 寄稿 平成17年 7月 1日

中国経済変調の兆し

世界工業国の怨嗟が累積し経済問題が噴出してきた。五月、欧米の中国繊維製品輸入急増の反発が表面化、米国は緊急輸入制限を発動。ブッシュ大統領初め財務長官は人民元切り上げを論じ知財権侵害の深刻さも政治問題化。歴史的台頭の中国だけに米国は疑心あるもまだ慎重さが窺える。6月、中国を代表する上海株価指数の8年ぶり一時的大台割れは変調の兆し。日本の対中輸出は対米を抜いて第一位だが、34月と鋼材輸出は減少に転じた。昨年の世界的原油大幅上昇は、世界石油需要増加の三割が中国需要で、同国の原油ガブ呑みが主因。日本のエネルギー効率一割の中国、北半球環境悪化の主因である。
凄まじい不動産開発は環境を破壊、大気汚染・水不足・沿岸汚染を齎し、商業都市上海の地上げは限界に到達しバブル破裂寸前。その裏に、巨額の不良債権を隠蔽する銀行群、国営大銀行の一つは
5兆円の公的資金を幹部が1兆円山分け、その非近代性、不透明、不良債権の山で統治機能が欠如。世界第三の経常黒字国に躍り出たが、外資流入は600億ドル(6兆円)を突破、6兆円は中国にとり60兆円の感覚。
自前の経済・技術基盤のないハリボテ経済、事業の下流が無く低廉労働力と外資・外国技術との結合によるバブル繁栄に過ぎない事が露呈した。いつ本格的資本逃避が起きるのか、不安定な外資の経済植民地というのが実態ではないか。
暴走に近い経済躍進、看過できないのは軍事力の極端な増強で国際的に脅威と大不均衡をもたらしつつある。経済の資本主義化は一党独裁を空洞化するものを秘めている。資本主義の進展は腐敗と富の格差を増大し、自由を求める必然性があり、独裁体制が蝕まれ現政治体制を脅かすこととなろう。
暴動頻発、言論の自由無き大衆の不満をそらす手段は反日で、一段の日中関係悪化の覚悟と対策を要する。靖国で引いたら最後、日本は中国共産党の言論統制下に置かれ、執拗に中国国益の犠牲にされる。海外留学組の知的IT世代の覚醒もあり、独裁国家・中国も情報統制継続は不可能になり、国家統治の限界に迫ることとなるに違いない。
反日暴力デモのその後の反応を観察すると、中国の意図とは別に中国リスクを世界に伝播した。

既に市場経済は中国経済の減速を読み始め中国投資を抑制する動きが表面化して来たように思える。対中直接投資は昨年前半をピークとして減少を始めたし、昨年後半には証券投資が流出に転じている。人民元切り上げを見込んだ投機資金の動向は予断を許さない。
要するに中国経済は、膨大な外資流入に支えられているのだ。臆病な資本が、反日デモの映像を見て、中国リスクと捉え加速が潜行している。中国投資にブレーキと逡巡が発生すれば、中国経済の減速は必至である。独裁共産主義国への投資というリスクを投資者は保全しておくのが常識、法治・自由経済国ではないのだ。
このように中国大躍進は大きな壁に直面しつつあるのではないか。反日デモを契機として米国債利回りは一段と低下し利上げ前の水準に復元した。今春になり原油価格も適正価格になりつつある。これは中国への外資流入の変調と無関係ではなく、国際資本が中国から還流を始めたと言えるのではないか。
さて、中国はオリンピックまで持つか、変調が発生しており予断を許さない。共産主義国のこの似非−えせー資本主義は、矛盾の内蔵が累積し、このまま順調に推移する必然性はないと思われる。
思い返せば、ソ連共産主義崩壊、日本のバブル崩壊、そしてアジア諸国の通貨危機、これらの大津波が同時に、一気に中国に襲いかかってくるのではないか。上海周辺の人件費上昇も始まっており魅力の低下は免れず、安定感ある民主主義国インドとか、勤勉なベトナムやタイ国への経済シフトは確実に潜行している。
中国の無法、無秩序の覇権的経済・軍事暴走は、反日デモを契機に改めて同国のガバナビリティの欠如・危険思想を露呈し世界の警戒心を大きく高めつつある。

(鳥取市)鳥取木鶏クラブ 代表世話人 徳永圀典