団塊世代800万人 日本海新聞潮流 寄稿 平成18年4月4日 

さる2月、敬愛する同級生の森下耀雄氏に誘われ、かって在籍していた鳥取北ロータリークラブ創立45周年記念パネルディスカッションを聴講。基調講演が尊敬する既知の鳥取総研理事長道上正規氏であり興味があった。講演はさすがで団塊世代の社会的な位置づけ等すっきりと頭に入った。同世代6人のパネラーも卑近な話題を披露された。

私もこれに触発されて別の視点で団塊世代を論じたい。同世代は敗戦により多くの青壮年が軍隊から帰国し人口構成上突出して激増した昭和
22年から24年出生の人々で800万人。この存在は大きな比重を占めよくも悪くも社会に一定の影響を与え続けてきたし今後も続く。私は同世代と1617才年長の昭和6年生、旧鳥取一中2年で陸軍幼年学校に指名入学予定であったが敗戦で自然消滅の世代。

パネラーの戦争に関する発言は田中彰氏がベトナム戦争、福本登氏は父上が満州から帰国されたとの二点のみ。私はこれを聞いて団塊世代には抜け落ちているものがあり、それが幼児の刷り込みとなって育ち、我々世代と違い日本の祖先・国史が肌感覚で分からないのは無理がないなと直感した。

日本国を人間に例えるなら、当時の日本は米国により銃剣で脅され、人間としての過去の名誉も人格も自由も剥奪された囚人で言動不随意、禁治産であった。民族の中核をなす神道、天皇等あらゆる伝統精神・文化は全て悪なりと米軍命令で強制放棄させられた時代に出生したのが団塊世代。同世代の親は不随意ではないが米国軍命により占領政策批判は一切不能の監禁状態の時代であった。
国家という親の頭脳も精神も無し同然、主体性を強奪され、国家国民の人格、尊厳、意思、自由は剥奪されていた。飢餓的食糧難であり国民は極貧生活、ひたすら食糧と物の追求をして生きることのみ考えた時代であり利益追求だけの戦後日本人の出現となる。

人間とか国家の尊厳よりその日を生き抜く事に精一杯の時代に生まれた世代である。個別論ではなく全体で見れば、日本人としての伝統も教育も全く顧りみられない時代で米国軍命によるものしか子供に教えられない状態であった。国民は経済分野で懸命に生き抜くしかなかったが、親たちは明治・大正の生まれであり伝統精神は身につけていたから日常道徳とかも完全には失われることはなく、和魂洋才により経済繁栄の基礎を作った。

だが、団塊世代の成長に従い、その教育は占領軍命令によるものであり、それが幼年期の刷り込みとなり、日本の素晴らしい伝統や父祖の事績はかき消され剥落した。団塊世代の子や孫は余程の家庭でなければ、民族としての無形・有形の伝統がともに剥落してしまったままと言える。

千古脈々たる日本の伝統や精神の断絶がこうして発生し、団塊世代の子や孫の成人した現今日本は、再び団塊現象が二次的に大発生し民族の伝統、国史という縦軸喪失の危機に瀕している。

私のHPを見て日本の事がよく分かった、教えられていなかった等、全国各地の団塊世代から多々反応がある理由もここにある。私の話を聞きたいと県内外から、ここ
2年で十数回の講話依頼を受けた背景と私のその認識は合致する。

団塊世代が私の指摘したような世代であれば、これからは失われた日本の歴史伝統への知的回帰を高齢化問題の一つに加えて欲しい。かかる意味で団塊世代最後の大仕事として日本の歴史伝統の正しい知見、見直しと復元へその大きな団塊エネルギーを注がれん事を切望する。

(鳥取市)鳥取木鶏研究会 代表 徳永圀典