ドル急落、さてどうなるか?


あっと言う間に円が10円程度高くなった。逆に言えば、あっと言う間にドルが安くなった。1995年に経験したドルの80円割れが再び来るのか。私は、極端なスパイラル的ドル安を重大に懸念している。日本の外貨準備は現在8700億ドルと世界一である。昭和30年代、外国為替の当事者であった私には隔世の感がある。70億ドル程度になると、外貨不足で日銀は金融引き締めをやり輸出ドライブをかけては凌ぐというものであった。
さて、ドル安の弾みがついたのは、次の発言からである。
1.米国、連銀総裁の発言ードイツー二十ケ国の財務省・中央銀行総裁会議
「米国の経常赤字の大きさを考えると、ある時点でドル需要の減退が発生することは説得力があるように思える」
実に不気味な発言で、先行きのドル安を暗示している。
2.ダラス連銀のマクティア総裁の発言ーー11月初旬辞任。
「経常赤字は問題を引き起こす。資金流入が減り、金利上昇、ドル急落など危機的状況になる」
3.ドル安は対円だけでは勿論ない。対ユーローでは、1ユーローが1.3ドルを突破。ユーロー開始以来の最安値。
4.カナダドル。スイスフラン、ウォンなどアジア通貨に対してもドル全面安である。
5.ドル売りの原因は「双子の赤字」
経常赤字ーー2003年で5306億ドルと過去最大。 2004年の予想は6500億ドル。2005年は7000億ドルと予想。
      −−経常赤字の相手国筆頭は中国、次の黒字国がEU、日本。
財政赤字ーー2004年度4130億ドル。
4.一体アメリカはどうするのであろうか。財務長官は更なるドル安を容認しているようである。然し、経常赤字が年間6000億ドル突破という水準になると、この赤字をファイナンスするにも限界があろう。昨年は日本が大量、のドル買い介入した総額32兆円である。
5.一説によると、産油国も中国もドル保有を減らしユーローに切り替えつつあるという。
アメリカのドル急落は、日本が最大の被害を受ける。そうなると、どうなるか。
1.トヨタ自動車初め、日本の大輸出産業の利益が一瞬にして吹き飛ぶ。
2.巨額ドル保有による巨損の発生。
3.株式の大暴落。
まあ、持ちこたえれば、円が高くなるのだから悪いことばかりではない。然し、国や企業のの持つドル資産の評価損はオソルベキこととなる。ドルばかり持ちすぎでアメリカと運命を共にするのか。アメリカが基軸通貨国の特権を恣にしてきて冷戦後、本質的な対策を講じないできた大きなツケが遂にどうにもならなくなって、これが世界戦略にも大影響を及ぼすことになるのであろうか。歴史の常道通り、アメリカの没落の始まりとなるのであろうか。我々には、なすすべも無い。見守るだけである。 平成16年12月 日