補陀洛山寺( ふだらくさんじ)  和歌山県東牟婁郡那智勝浦町浜の宮


補陀洛山寺は、浜の宮王子の守護寺で、那智権現所属の七ヶ寺の本願のひとつ。那智権現の末寺のひとつ。天台宗に属し、山号は白華山。本尊は十一面千手観音。本尊は重要文化財に指定され、平安後期の作。
 また、明治初年、那智山で神仏分離が行われるに際して、那智山の仏像仏具類は、この補陀洛山寺に移された。

ところで、この補陀洛山寺、「補陀落渡海(ふだらくとかい)」の出発点。

「補陀落」とはサンスクリット語の「ポタラカ」の音訳で、南方の彼方にある観音菩薩の住まう浄土のことをいい、『華厳経』にはインドの南端にあると説かれている。観音信仰の流布とともに、チベットや中国にも補陀落は想定された。チベットではラサ北西に建つ、観音の化身ダライラマの宮殿をポタラ(補陀落)宮と呼び、中国では舟山諸島の2つの島を補陀落とした。
日本においては南の海の果てに補陀落浄土はあるとされ、その南海の彼方の補陀落を目指して船出することを「補陀落渡海」とした。
 日本国内の補陀落の霊場としては那智の他に、高知の足摺岬、栃木の日光、山形の月山などがありましたが、記録に残された40件ほどの補陀落渡海のうち半数以上が熊野で行われてい.。熊野は補陀落渡海の根本道場といってもよい場所。