熊野本宮大社(くまのほんぐうたいしゃ)  和歌山県田辺市本宮町本宮


 古くは「熊野坐(くまのにます)神社」という名で呼ばれていた。熊野三山の中心で、全国に3000社以上ある熊野神社の総本宮。

 34回と最多の熊野御幸を行った後白河上皇(1127〜1189)は、『源平盛衰記』によると、本宮へは34回訪れた、新宮と那智は15回。
 新宮那智を略して本宮だけを詣でて熊野御幸を済ますこともしばしばあったことからも、本宮が熊野三山の中心である。

 鳥居の前に立つと、まず、大きな八咫烏(やたがらす)の幟が目を引く。
 八咫烏は熊野権現の使い。三本足の烏。

 鳥居をくぐり、杉木立のなかの石段へ。 石段の両脇には「熊野大権現」と書かれた奉納幟が立ちならんでいる。
 129段の石段を登りきると、正面に神門があり、向かって左手のほうには真新しい礼殿が見える。

 神門をくぐると、檜皮葺きの古色蒼然とした社殿が向かって左から第一殿・第二殿の相殿(あいどの)、第三殿、第四殿と3棟並んでいる。

 神門の先、中央にあるのが第三殿。この第三殿が本社です。「証誠殿(しょうじょうでん)」といい、主神の家都美御子大神(けつみみこのおおかみ。家都御子大神(けつみこのおおかみ)ともいいます)を祀ってある。
 家都美御子大神という名はのちに付けられたもので、平安初期には熊野坐神(くまのにいますかみ)と呼ばれていた。

熊野本宮大社社殿  向かって左に、第一殿・第二殿の相殿。相殿のため、第三殿や第四殿よりひと回り大きく、また、この相殿の正面に礼殿があるため、相殿が本社のように見えるかもしれませんが、中央の第三殿が主神を祀ってある。

 第一殿を「西御前(にしのごぜん)」といい、熊野牟須美神(くまのむすみのかみ)と事解之男神(ことさかのおのかみ)を祀ってある。
 第二殿を「中御前(なかのごぜん)」といい、御子速玉之神(みこはやたまのかみ)と伊弉諾尊(いざなぎのみこと)」を祀る。
 家都美御子神・牟須美神・速玉之神の3神を本宮・新宮・那智の熊野三山は共通に祀っているが、それぞれの主神は異なっている。熊野牟須美神は那智の主神で、御子速玉之神は速玉の主神。

 向かって右の第四殿は「若宮(わかみや)」といい、天照大神を祀ってある。
 以上の四社を上四社(かみよんしゃ)と総称。
 第五殿から第八殿までを中四社(なかよんしゃ)、第九殿から第十二殿までを下四社(しもよんしゃ)というが、中四社と下四社は明治22年の水害で流され、いまはもうない。