日本海新聞潮流寄稿 平成17年10月4日
                         
             風土
 

ノーベル賞創始者ノーベルはダイナマイトを発明して巨万の富を築いた。火薬のダイナマイトがなぜ巨大な富を齎したか。欧州は氷河に削られて岩盤が露出し、破砕しなければ住宅も耕作も不能であった。欧州の北緯はロンドン51度、パリー49、ノーベルのオスロは60度、樺太の北海域と同様である。東京36度、札幌44度、いかに欧州が北に位置するか。太陽のイメージある南欧、モナコ、ローマ、ナポリも北海道辺りに過ぎぬ。欧大陸や北アフリカは岩盤や砂漠だから地中海に微生物が注がれず魚介類が貧困。日本近海の魚の美味い秘密が分かる。

日本の主要都市はエジプト・カイロ等の北アフリカ圏の緯度だが、あちらは雨がなく砂漠地帯。世界には砂漠・草原・森林・灼熱・極寒・熱帯・温帯と様々な国がある。
日本はサンサンと太陽が注ぐし、抜けるような冬の青空もある暖温帯。ロンドンの冬はスモッグで陰惨に近い冷温帯。その上、日本は多湿であるから緑は豊富、大地は堆積土であり稲作に適し、四季もあり人間の住む環境として誠に恵まれている。
彼我、この違いある風土で何万年も生きておれば、大きな格差が人間の気質や肉体に生じる。

イスラム教・キリスト教・ユダヤ教は過酷な環境から生まれた宗教。砂漠では立ち止まっては餓死する、移動し食物を求め生きて行く狩猟・移動牧畜が生活の基本。星辰を頼りに人間の群れは一人の力強いリーダーに従うしか生きて行けない。
ここから彼らの原理が生まれる。砂漠で生まれた宗教は唯一絶対神、異教徒を排し、絶対の信仰を捧げ、歴然たる排他性、差別性を歴史に記録している。彼らの神々は血の滴る生贄をお好み召さる。清浄と新鮮野菜を好まれる日本のカミとは大違い、神に民族の本質が現われる。所詮、人間は風土の産物。
彼等は農耕で食べられないから、海賊行為、他地からの略奪で手っ取り早く幸福を掴む。京大元教授、会田雄次氏は「彼等は略奪が最も一番豊かになる方法で、優秀な人間がやる企てであると考えていた。英国の王家は先祖が海賊であった事を誇らしげに宣伝している」とまで言う。狩猟民族は動物の捕獲に、罠とか囮をかけて騙して捕え、おびき寄せる技術に長ける。彼らのマネー、市場経済原理と同根。牧畜・遊牧は絶えず動物を殺して食べ、血を見て暮らす生活。日本人は家族同様の牛を明治以前は食べなかった。クジラを食べるのが残忍で牛を食べるのは残忍でない彼等の発想。獰猛、残忍性はこの過酷な環境で生きてきた証し。英語・中国語は、主語の次に動詞が来る、これは行動性を示す砂漠の民の証し。日本語は終わりを動詞で締めくくる。
世界の富を求めてコロンブス以降の白人が世界に進出、
19世紀は日本以外は殆ど植民地と化し本国は栄耀栄華、白人以外は人間種に非ずと、一億以上の黒人を虐殺し黄色人種を差別した。

その白人に敢然と立ち向かったのが明治の日本人。だが日本は、このように野蛮な欧州に憧れすぎて、世界史は欧州から始ったような教育を明治以降進めてしまった。米国建国時、星条旗の星の数は
13州、今や50州、これは侵略による併合の証拠。歴史は国により相反する理解があって当然、米国の初代大統領ワシントンは英国では領土を奪った人間として教科書に書かれている。それに対して互いに何も言わない。国の歴史を相手国の主張通りにするのは属国か、隷属化する事と同様、民族に対する重大な背信である。

この五百年間、白人の物質・物量思想、私は「西洋の原理」と呼んでいるが地球生態的に最早や限界に達しつつある。眼には眼をの復讐思想、これは唯一絶対神の原理であり、有史以来のイスラエル・パレスチナ紛争は到底治まらない。両国の戦争孤児を日本が引き取り共に育て、手をつないで遊ばせ、平和の尊さを無為自然に体験させているやに聞いた。日本しか出来ない素晴らしいことである。

砂漠の民は水が無いから日本人の様に怨念を水で流し和を創るのを知らないのであろうか。人間とはまさに風土の産物である。

(鳥取市)鳥取木鶏研究会 代表 徳永圀典