安岡正篤先生  特別講話
                      その五
           
人物修練の根本的要件

人物修練の根本的条件は怯、おじめず臆、おくせず、勇敢に、而、しこうして己を空むなしうして、
あらゆる人生の経験を嘗、なめ尽くすことであります。

人生の辛苦艱難、喜怒哀楽、利害得失、栄枯盛衰、そういう人生の真実、生活を
勇敢に体験することです。
その体験の中にその信念を生かして行って、初めて吾々に知行合一的に自己人物を練ることが出来るのであります。 
      (安岡正篤とその弟子)

名士と迷士
人間も木と同じことですね。
少しの財産だの、地位だの、名誉だの、というようなものが出来て社会的存在が聞こえてくると、懐の蒸れと一緒でいい気に
なって真理を聞かなくなる、道を学ばなくなる。つまり風通しや日当たりが悪くなるわけです。
「名士というものは名士になるまでが名士であって、名士になるに従って迷士になる」などと申しますが、本当にそうですね、
もしそうなるとつまらぬ事件などを起し意外に早く進歩が止まって根が浮き上がり倒れてしまう。
実業家、政治家、学者、芸術家と称する者を見ても、およそ名士というようなものはそういうものであります。 (論語の活学)

無名有力
大体、人間は成功すると案外に無力になるものです。有名になると無力になる。
かえって無名であることが有力である事が多い。
私は絶えず有名無力、無名有力ということを言う。