上御殿 和歌山県 竜神温泉

JR紀勢本線、紀伊田辺駅からバスで1時間半。日高川の渓谷沿いに10軒あまりの宿が並ぶ龍神温泉は、山の中の静かな落ち着いた温泉。
上御殿は、龍神温泉の中でも最も由緒ある宿で、江戸時代には紀州徳川家の殿様専用の湯殿であったとのこと。当時の建物は、明治時代に火事で焼けてしまったが、殿様の「御成の間」が、玄関を入ったところに復元されている。
浴室はすべて木でできており、湯船は総檜造り。木の香りが漂い、大きな窓から見える山と渓谷が美しい。
湯は無色透明の重曹泉。さすがに「日本三美人の湯」のひとつだけあって、面白いぐらいに肌がスベスベになる。
渓流沿いには小さな露天風呂がある。1つしかないため、一応混浴なのだが、2〜3人しか入れないほどの狭さ。


予ねてから、一度はと思っていたこの温泉、露天風呂が中々良かった。古い格式のある雰囲気が残っている。眼下の流れる渓流の美は対岸の杉の美林の色鮮やかな美しさと共に疲れた心身を癒してくれるのは間違いない。少し太めのトンビが数匹悠々としていた。
本館は平成11年に国の登録文化財に指定されている。江戸時代初期、明暦3年、1657年、徳川頼宣紀州藩主の御宿の管理を竜神家に命ぜられ、「上御殿」の屋号を賜ったとある。現在の当主は、あの源三位頼政の五男頼氏の29代に当たるという。