紺珠(かんじゅ)        

読書週間にちなんで。

50年前となるから20歳過ぎである。私は紺珠と名づけた「読書録」を始めていた。
紺珠とは、手でなでると記憶が甦るという紺色の玉で唐の故事に由来する。

今は黄ばんでいるが、私の心の軌跡のようで大切なものとなっている。現在はパソコンに取って変わって少々味気ない。

悩み多い多感な20代、仕事では男の正念場の30代を乗り越える事を得たのも、この読書録のおかげとも言える。その中から抽出した言葉を31枚の日々の栞として通勤途上に心に銘じた思い出が深い。その栞も手垢で薄汚れているが私の宝物である。多少、気恥ずかしいが31枚をご披露してみる。格言は今尚身についていないし隔世の感もあるが。

1 良書を読むには悪書を読まぬことを条件とする。人生は短く時と力は限られているから。                                 (ショウペンハウエル)          

2 迷うことはない。成否は別だ。この偉大な山に対して人間の示し得ることは、ただ、その強い意志より他にないのだ。  
                      (チョコリザ登頂成功 加藤隊長)

3 けだかさは、すべてに対して広い視界を持ち宏量であることであり、自分自身のことについて無関心で他人の為に配慮世話する心情である。 ヒルティ

4 間違いなく、いつもよき思想を以て毎朝を始めよ。唯、思い煩いと、ため息を以てせずに。                        (ヒルティ)

5 謙遜が足りないのは分別が足りないのだ。押しの強い高飛車な言い方をしないよう思慮に富む善意の人々に望みたい。            (フランクリ

6 成長を欲するものは、まず根を確かにおろさなくてはならぬ。上にのびる事をのみ欲するな、まず下に食い入ることに努めよ。        (和辻哲郎)

7 生活を満たして生活に一つの意義を与えるような熱情や苦悩が必要である。                               (ジャン・クリストフ)

8 人の先頭に立つ為には実力がなければならない。実力と言うものは一朝一夕につくものではない。それは努力の集積である。こつこつと積み上げられるものである。実力をつける為には血のにじむような人一倍の努 力がいる。       (住友銀行堀田庄三頭取)

9 怒るべからず、恐れるべからず、焦るべからず、誠意を尽くして信頼をうける。簡単なことだが結論はこれに尽きます。               (大田垣士郎

10 勉強、勉強、勉強、勉強のみよく奇跡を生む。武者小路実篤}

11.生き、苦しみ、戦うことだ。苦しみと戦いと、男々しく堪えていく事によってのみ一個の人間になれる。                           (ジャン・ク リストフ)

12 愛、じつに、これが人生のすべてだよ。    (ドストエフスキー)

13 深く掘れ、よく耕せ、一尺の土地にも収穫がある。(ゲーテ)

14 礼儀は、その人の姿を映すかがみだ。      (ゲーテ)

15 自他に益なき事を語るなかれ。駄弁を弄するなかれ。自他に益なきことに金銭を費やすなかれ。即ち浪費するなかれ。               ( フランクリン)

16 勝利をめざす人の眼はけっしてよそみしない。  (ディフィルズ)

17 善い結果を得るためには生来の才や手腕にたよるよりも、ただ一つの仕事に終始専心没頭することが肝腎である。                   (キケロ)

18 人生でいちばん大事なことは失敗したらじっと歯をくいしばって我慢をし、成功してもすぐに有頂天にならないことだ。              (ストエフスキー)

19 一度失った信用は二度と帰ってこない。      (プブリウス)

20 腹に思うても口にはださぬこと、突飛な考えは実行に移さぬこと。つきあいは親しんで狎れず、それがなにより。どんな人の話も聴いてや れ。だがおのれのことを、むやみに話すじゃない。他人の意見には耳を貸し自分の判断はさしひかえること。(ハムレット)

21 約束を守る最上の方法はけっして約束しないことである。                                          (ナポレオン}

22 いかなる時でもお辞儀はし足りないよりもしすぎるほうがよい。                                           (トルストイ)

23 考えにプロポーションがとれていると言う事は、要するに多面性を見せている社会の現実をあまり理屈でひねくらず、経験的に素直に見て ゆく、従っていろいろの現象をその重みに従って秤量しているという事であろう。             (笠信太郎)

24 私はこの年になって、これが真実だ、これがその問題に対する結論だとふれ廻ることは、いつになっても危険千万である事にきがついた。
                           (エドモンド・ブランデン}                    

25 心のもちようはカラリと晴れてかくしだてなどせぬがよい。自分の腕前はソットしまってひけらかしたりせぬがよい。               (菜根談)

26 私は人と人の交渉が真実と誠実と廉直とをもってなされる事が人間生活の幸福にとって最も大切だと信じるようになった。   
                           (フランクリン)

27 常に気分の平静を保ち、人と語る際には快活を失わず慇懃に振舞って一般の尊敬を集めるように努め、人をそしったり皮肉ったりする悪い 癖を慎むようにと戒めた。
                   
        (フランクリン)

28 清廉さは誠実で良心的である事である。清廉で重厚な深みのある人間である事は銀行人の根本的要件である                   (住友銀行行努研究会)

29 労せずして価値あるものを得ることはできない。   (デモフィルス)

30 愛は寛容にして慈悲あり。愛はねたまず、愛は誇らず、たかぶらず、非礼を行なわず、おのれの利を求めず憤らず、人の悪を思わず、不義 をよろこばずして、まことのよろこぶところをよろこび、おおよそ、こと忍び、おおよそこと信じ、おおよそこと望み、おおよそこと耐ふるなり。                       (コリント前書)

31 信用を重んずること。言葉を慎むこと。独立心を起こすこと。規律を尚ぶべきこと。礼譲を重んずべきこと。時間を貴ぶべきこと。忍耐力を養うこと。自尊の風を養うこと。筆跡を慎むこと。                        (出処失念)

自戒追加

1.職業人として大成する為にはいかなる場合にも誠意と努力という二つの要件が必要であるが更に大切なものは己れに克つ勇気すなわち克己心である。失意の時に焦らず、くさらず、得意の時にいばらず、自重する事、こうした絶えざる努力の積み重ねが所期の目的を達成する為の要諦である事を忘れてはならない。

2.信用を重んずる者は 
  @軽率な言動をしない。常に適正な判断に努める重厚さを持つ。
  A確実を旨とする。当然慎重堅実である。
  B自分の利益だけを考えない。相手の立場になって考える。
  C不断に智徳を磨き創造的である。
  D困難に挺身する勇気と責任感を持つ。
      以上
                                                                   

                           平成10年10月1日   徳永圀典